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月の夜の共犯者 7.


新東名高速道路を西へ、そのまま伊勢湾岸道路を左に入り名神高速を目指した。

一度だけトイレ休憩で、パーキングに寄った以外はノンストップで西を目指した。

少しでも東京から離れたかった。
僕たちがやっていることは決して間違いじゃない。社会的な通念を持ってしても非難されることではなかった。

だが1番危険なのは、アイツに馨の居場所が判明し跡を追われることだった。

きっと居場所をしればアイツは、逆上し
馨に会いにきた上で馨を刺してしまいかねないと思った。

だから用心に用心を重ね、初日は馨と計画を立てながら夜を過ごした。

車は間も無く出口、京都の国道1号線に出ようとしていた。
今日はさすがに疲れた。近くのファッションホテルに泊まるためU字をカーブし、ホテル街へと向かった。
ビジネスホテルを選ばなかったのは、身バレを防ぐためだった。

「ここでいい?」
「うん、いいよ」

コンビニで幾つか飲み物を買い、ホテルへと向かう。

ホテルスイートの駐車場に泊まり、中に入った。入り口付近のタッチパネルにはタイプ別に部屋が分かれていて、ボタンを押す仕組みになっている。

あまりにも安い部屋だと馨に失礼かと思い、真ん中ランクのCタイプの部屋のボタンを押してそのままエレベーターであがった。

泥のように疲れていた。
馨は僕の手を握りながら、
「運転お疲れ様。今日はゆっくり休んで」と肩にもたれかかってきた。

途端に欲求が芽生えてくる。

とりあえず部屋に入り、荷物を置くと僕は馨にキスをした。

そして長いキスのあと、
「お風呂にはいろ…か」と湯船を貯めてお風呂に入ることにした。

湯をためている間、馨はテレビのニュースを眺めていた。

「例のこと、ニュースでやってた?」

画面越しには報道記者が慌しく、うちの会社の前でリポートしている姿を想像していたが画面には、最近のエンタメ情報しか映っていなかった。

「ソウ…もしかしてあのこともみ消されたり、してはいないよね」と馨は不安そうに呟いていた。

もし、そうだとしたら絶望的だった。

そのときパッと画面が切り替わり、慌しく報道記者がリポートをする場面に切り替わった。

「あ…」

テレビ越しにはリポーターが、僕たちのいた会社を映していた。

「速報です!速報です!株式会社△□が賄賂を送り、株式会社○○コーポレーションとの取引を不正に行っていたことが分かりました。

株式会社△□は、医療機器を主に製造、販売している会社ですが、△□は他にも不正なルートを介し業績を伸ばしていたとの話しもあり、営業機密侵害で警察の捜査がはいっているとのことです。また営業部長の家には家宅捜索が入っているとの情報もあり詳しい状況は確認中とのことです…」

僕と馨は顔を見合わせて、抱きしめ合った。

そのときは、まだこれが序章に過ぎないことを僕は知る由もなかった。


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