番外編:理系の君と文系の私

理系の君にはちょっとも想像がつかないだろう。

文系の私が今回の件でどんなに苦しみ悩み痛み傷つき、やり場のない怒りと悲しみと虚しさに日々体力と気力をこの3か月すり減らしてきたか。

文系の私のよくないところは想像力が働きすぎるところ。
いいときにはいいほうに、悪いときにはとことん悪いほうに。

理系の君は、君の発言や態度が原因でことあるごとに一喜一憂する文系の私を横目に見ながら、まるで研究室で培養しているなんとか細胞を毎晩チェックするみたいに、着々と次に進む準備をしていた。

そして、想像力が働きすぎる文系の私も手伝って、君は無事、新しい彼女(理系)と新しい毎日を過ごし始めている。

君は、大事な決断を全て私にゆだねた。俺に決める権利はない、とかなんとか言って。
別れるか・別れないか
二人で飼っていた犬を君が飼うか・私が飼うか

先に述べたように想像力が働きすぎる私は、君と私二人の問題をなぜか一人でとことん悩んだ結果、君とは別れる選択をし、犬は君に託した。

こんな風に人を傷つける君に、犬を託すという選択をするのは、やっぱり間違っているんじゃないかと思って、私は私を納得させるためにしばらくかかった。
親しい友達にはその理由をもう何回も説明したから、すらすらいえる。
「新しい彼女は幸い犬好きで、"君"の新しい家は彼女の最寄り駅だし、そのほうが犬にとってもさみしくないだろうから。」
あの仔のために、託した。

君がいま、どんな生活をしてるのか知らない。
私と君の間が寝るときの定位置だったあの仔が、今はどんな顔で彼女に甘えているのかも知らない。

私は君との思い出がありすぎるそこにいられず、地元に帰ってこの文章を書いている。
本当は直接伝えたいけれど、いまこれを伝えたところで理系の君には何も響かないんだろうってことも、持ち前の想像力のおかげで、文系の私にはよくわかっている。

でも、想像力の働きすぎる文系の私にも、いまだに想像力だけでは解せないことがある。
理系の君が最後に流した涙の意味、その切なげな、まるで文系の男がするその表情が示したかったものは何だったのか。

補足
この文章で伝えたいことは、"理系の人間は冷たい・心がない"、"文系の人間は妄想が激しすぎる"ということではない。
あくまでも、文理選択に基づく人間の思考回路・行動パターンを想像して書いてみただけのもの。
いつか、この件を「あんなこともあったな」といって笑える未来が来ることを祈って。

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