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人間にしかできないこと

AIの台頭によって人間にしかできないことは何か?を問う機会が増えてきたように感じます。これに対してAIを知らずにイメージで考えるだけでは恐らく誤った結論を出す可能性があります。


誤った結論の例

例えば「人間にしか感情がないから心を込めた接客や作業は、人間ができる価値発揮だ。」これは一見正しそうに見えますが、個人的な見解としては、むしろここもAI領域の得意分野だと考えています。実際には「AIは感情を持っていないが、相手が心地よいと感じられるような感情が伴ったように見える接客は得意」ということです。

その裏付けとなる技術的なピースをいくつか挙げると、

GPT-4が、相手の精神状態を理解する能力を備えることができたという研究が出ていたり、

https://arxiv.org/abs/2302.02083

プロンプトによって、現在の感情パラメータを出力することも可能なので、これをもとにどのような感情表現をするかを制御できたりもしますし、

https://note.com/fladdict/n/n5043e6e61ce3

Barkと呼ばれる音声生成AI(text-to-audio model)で、実際に会話の中でのちょっとした笑い声などを[laughs]みたいに指定すると生成することができたりします。(ここは今後急速に発展してくるはず)


このように一見人間にしかできないように見えることでも、実際にはできてしまうことも往々にしてある気がします。


この記事で伝えたい主旨

「人間にしかできないことは何か」を知る、1番の近道はAIを使って理解するだと思っています。そうすると「あーこれは今の段階だと難しそうだわ。」といったことが少しずつ見えてくるので「ここは人間がやらないとだね。」と境界線が見えてくるはずです。

今回、AIの最新情報を手を動かしながら追っかけている中で、現状、あるいは中期的にはまだ人間にしかできないだろうなということを挙げていきます。

ただ現状であって、ゆくゆくは大体のことはAIができると思っています。ここでは中期的には(3年くらいは)できないだろうなということを挙げていきます。


人間が得意なこと

違和感のないリアルタイムコミュニケーション

ポイントは以下3つ。
・レスポンス速度の速さ
・間の取り方
・自分が話し始めるべきかの判断

レスポンスの速度はこの投稿を見ると、日本人は0.6秒以内にレスポンスをしないと違和感を覚えるとのことです。この瞬発力は驚異的だなと思います。

また間の取り方も相手とのテンポがあったり、またこれは相手が次に話し出す間なのか、それとも次に自分が話し出す間なのかの判断と必要です。これを瞬時に行い、レスポンスをするのは現状の技術では限界がありそうだなと感じています。

さらにこれが複数にでの会話となった時に、この会話の流れから自分が話すべきか、相手が話すべきかを瞬時に判断することが求められてきます。実際これは人間も難しいところですが、話し始めるのが被らないようにするために、相手の顔や空気感などさまざまな情報から総合的に判断をする必要がありそうです。

現状はやはりLLMが生成されるレスポンス速度がボトルネックとなっている感じがします。創意工夫が至る所でされていますが、今の所難しそうです。


身体性をもった作業

人間の身体は柔軟かつ繊細な動きができるため、さまざまなタスクに汎用的に対応することができますが、現状そのような汎用的に色々こなせるロボットの開発はまだな気がします。

つまり、タスクを処理できる脳の部分はできたとしても、そのポテンシャルが活かせる機体ができあがってくるのはもう少し先な気がします。また技術的にできたとしても、価格的に普及されていくレベルになってくるのはまだまだ先でしょう。


相手が人間であるという前提意識

相手はAIだからという前提があることで、人間の心を動かしにくくする節はあると思います。ただここについてはキャラクター性を持たせたりすることで、乗り越えられる可能性はあります。アナログハック(※)と言ったりします。また、これまでの人生で積み重ねてきた経験に基づく価値観であり、世代が変われば失われていきそうな気はします。

アナログハック
21世紀の現代でも、たとえば警官の格好をした人形を見ると、人は緊張感を抱く。これは、人間が同じ人間の“かたち” に反応して、さまざまな感情を抱く本能のせいである。考えるよりも速く、視覚をはじめとする五感で感情が動いてしまうという意識のセキュリティホールを狙い、人間の“アナログ的な意識”をハッキング(誘導・改変)することを、アナログハックという。この作用を利用するため、hIEは人間の“かたち” をしている。

引用:BEATLESS 公式HPより
http://beatless-anime.jp/keywords/index.php


五感を通した現実世界の情報

デジタルな世界に落ちてくる情報の形式としては、テキストで表現できるものであったり、視覚的な情報、音のような情報が主です。ただ現実世界の場合、それに加えてその空間の温度や、匂い、また触れているものの触覚や、食べているものの食感や味などがあります。これらの情報はまだデジタル領域には少ないため、人間が感じ取れる優位な点であると思います。

実際にビジネスに置き換えた時、やはり創造的な食関連の仕事はまだAIより人間の方が良さそうな気がしたり、またモノづくりにおけるそのモノの質感的な良さといったものも人間が分かり、評価することができるのかなと思います。


現実世界への仮説検証

あわせて汎用的なタスクをこなせる身体性も持っていないため、考えた仮説が本当に正しいのかを検証する術を持っていません。現状、デジタル空間ではそのような仮説を検証してより確からしい答えを生み出す機構などは生まれてきていますが(例えばAutoGPTなど)、現実世界に関してはまだ先な気がします。ただ特定のタスクレベルの仮説検証はできるかもしれません。


ビジネス上の意思決定

責任もどうするのかという問題があり、ここは人間に適用されてくる感じなるはずなので、当分は意思決定については(技術的にはできるけど)できない形になるでしょう。とくに重要な意思決定ほどその傾向は強くなるはずです。

なので人間の強みとしては、適切な意思決定をするための情報の理解力と、哲学や判断軸。そしてそれらの土台となる重要かつ良質な意思決定をしてきた経験が重要になってくると思います。


キーワードは、身体性と会話と意思決定(どちらかというと意志かも)な気がしますね。

五感を研ぎ澄ましていろいろな情報を感知し、それらの情報を統合して直感的に仮説を生み出したり、新たなアイデアを生み出したりして、それらを会話や現実世界でのアクションを伴って、意志を持って形にしていくことは人間の強みを活かしたスタイルになってくると思います。


ただ個人的には「人間にしかできないことは何か?」と言う問いは勿体無いなと思っており、「AIを活用して新たにできるようになることは何か?」を考える方が幸せだなと思っている派です。

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