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よくわからない3DCoat紹介1

3DCoatとは?

3DCoatは、スカルプトやリトポやUV展開や3Dペイントなどが行える多機能なツールです。機能が比較的近い類似ツールとしてはZbrushやSubstance 3D Painterなどがあると思います。
こちらの記事では「3DCoatとは?」というツール全般の紹介ではなく、「アニメの背景風表現を3DCoatの機能で3D空間上に描く方法」の紹介を主に行いたいと思います。具体的には、下記のツイートで私が紹介したものの簡易メイキング記事になります。
まだ試行錯誤中の手法ですが、「こんなツールでこんなこともできるんだ」と3DCoatやアニメ背景風表現に興味を持っていただければ幸いです。

3DCoatを使って、このようなアニメの背景風の表現で作成することを試みました

作成工程の紹介

3DCoatは非常に多機能かつ高機能なツールですが、日本語での情報は少なめであまり広くは知られていないツールのようです。やや独特な使い心地のツールで、使いこなすのが難しいツールと言われているのを旅々見かけます。私も10年くらい前から3DCoatに触ってきましたが、いまだに使い方の全容がまったく理解できていません。しかし不思議な魅力を持ったツールで、なんとか使いこなそうと取り組んでいる人も多い印象です。私もその魅力に取り憑かれ、わからないながら上手く活用できないかと試行錯誤しています。
そのような中で今回検証したユニークな機能の紹介をしたいと思います。
以下では検証例の作成工程の流れに沿って、使用した機能の紹介をしていきます。

作業準備

3DCoatを起動すると出てくるスタート画面です。用途によって多様な使い方ができるようです。今回は「ボクセルスカルプト」を行います。
とりあえず空の状態から始めます
こちらが3DCoatの作業画面です。ボクセルスカルプト用の基本UIです。

ボクセルツール

今回は主に「ボクセルツール」の「球」というブラシツールを使用しました。(「ボクセル」についての説明は割愛させていただきます。)
「球」のブラシツールでボクセルを作成している様子です。「球」のブラシの基本的な挙動です。このような感じで何もない空間にボクセルで直接描くことができます。ここでは板タブレットを使って筆圧感知を使用して描いています。2Dペイントツールのブラシツールと似た挙動で3D空間上に描くことができます。
今回使用したのはボクセルに色を着けつつ描けるという機能です。おそらく3DCoat2022の最新版の機能のようです。3DCoatは情報が少なく知らない内に新機能が追加されていることも多いです。ブラシのツールオプションの「Colored voxels」の項目にチェックをいれると使用できます。
するとこのように自由に色付きで3D空間上に描くことができるようになります。これは3DCoatではつい最近までできなかったことだと思われます。VRペイント用のツールなとでは当たり前の機能なのかもしれませんが、「3DCoatにいつの間にこんな機能が!」と驚きました。
例えばこのようにベースとなる大きな球体を用意し、その上に沿わせて描くこともできます。また、ブラシ設定を調整することで、ランダムに小さな球体を散布させるようなブラシ挙動にすることも可能です。Photoshopなどの2Dペイントツールではおなじみの散布系ブラシ設定と似たような設定も可能です。

カラーのみ表示で作成

今回はアニメの背景風の表現を行うための一手法として、陰影や質感ごと「絵として手で描きこむ」ことにしました。ビューポートの表示を陰影無し(スムーズシェーディング無し)の「カラーのみ」の表示に切り替えます。するとシンプルに色のみの表示になりますので、その状態で、自分で色を選びつつ普段背景画を描く要領でひたすら葉っぱを描いていきます。
ブラシのサイズを調整したり、時には移動ツールで引っ張ったりしながらひたすら絵を描くように描いていきます。どの角度からみても成立するようにグルグル画面を回しながら3D空間上に描いていく必要があり、かなり難しくいまだ試行錯誤中です。また、3DCoatには3Dペイント機能もあるため、シンプルに色をブラシで塗ったり「にじみ」ツールでになじませたりといったこともできます。ボクセルスカルプトと3Dペイントを同時進行で交互に行いながら仕上げていきます。
アニメ背景画表現の特徴についての補足です。アニメ背景風表現といっても実際の作品では様々なスタイルがありますが、ある程度共通する一つの特徴としては「面の重なりで立体感や空間を表現する」という特徴があると感じます。上はその特徴を図で解説しようとしたものです。そういったアニメ背景風表現の特徴を意識しながら描き込んでいきます。
こちらが一旦完成したものになります。詳しいペイントの仕組みはわかりませんが、UV展開されたポリゴンオブジェクトへのテクスチャペイントではなく、ボクセルへの頂点カラーペイントを行った状態だと思われます。細かい葉の形状を作るためにも、頂点カラーできれいに塗るためにもかなりの頂点数が必要になります。そのため、3Dデータがかなり重くなってしまうのがこの方法の問題点です。ビューの表示をシェーディングありの表示に戻すとモデルがかなりのハイメッシュであることがわかります。

以上のような機能を使いつつ、アニメ背景風の低木を作成してみました。地面も同様の手法で簡易に作成していきました。
最終的に下記のように仕上げてみました。

加筆した完成品

エクスポート方法

3DCoatでの作業完成後のエクスポートに関してです。
他の何らかの3DCGツールにもっていって使うためには何らかの方法でエクスポートする必要があります。
どのように活用できるのかはまだ検証中ですが、今回試したエクスポート方法を紹介します。

まず「ボクセルルーム」から「ペイントルーム」にUIを切り替えます。そしてペイントルームのファイルメニューから「モデルのエクスポート」を行います。※UIによってエクスポートメニューの種類が異なるようです。今回はペイントルームからのエクスポートを行いました。
エクスポート時には、ボクセルからポリゴンへの変換が行われます。その際にポリゴンの削減を行うことができます。ポリゴン数の削減を行うとデータは軽くなりますが、その分ディティールが失われます。今回は削減せずにそのままエクスポートしました。obj形式でのエクスポートになります。
こちらはエクスポートしたobjデータをCinema4Dで読み込んだものです。頂点カラーペイント情報がそのまま保持されていましたので、Cinema4D上で読み込んだ状態ですぐにカラーが反映されていました。
こちらは同様にblenderで読み込んだものです。なぜかblenderでは3DCoatでから出したobjデータを直接読み込むと、頂点カラー情報がなくなってしまいました。なので、Cinema4Dで一度読み込んだものをFBXでエクスポートしてからblenderで読み込んだところ、上手く頂点カラーが反映されました。
こちらはUE5に試しに読み込んでみたものです。一つのオブジェクトで数百万ポリゴンもありましたが、UE5のNaniteの機能を使ったおかげか沢山複製しても表示が軽かったです。

エクスポート後の扱いに関してはまだまだ検証中ですが、他のツールにも頂点カラー情報をそのまま持っていくことができるようでした。3DCoatで作成した後にblenderのグリースペンシルで更に加筆したり、UE5上で大量に配置することができそうなので、表現の可能性が更に広がっていきそうな気がしました。

おわりに

今回は、はじめて3DCoatの新機能である「Colored voxels」の機能を試してみました。
通常よくあるポリゴンモデリングでの3DCG表現では、表現が固くなりがちな印象がありましたが、今回試した3DCoatのボクセルスカルプトでは思った以上に絵画的な柔らかい表現を行うことができました。
まだ試行錯誤中の手法ですが、アニメの背景風表現などにの活用できる可能性を感じました。
また、ワークフロー的な部分でもだいぶ簡略化できたので、2D絵描きに優しい手法であるとも感じました。

従来のよくあるアセット作成手順では、
「スカルプト→リトポ→UV展開→テクスチャベイク→マテリアル設定→レンダリング設定」
と複雑でややこしい手順をふむ必要がありました。
今回の手法では、
「ボクセルスカルプトと3Dペイント同時作業→エクスポートして頂点カラー設定」
でほぼ終わりなので、とてもシンプルで気が楽でした。

とはいえ現状課題や制約も多く、「思った形状に描くのが難しい」「ポリゴン数が多くなりすぎる」「3DCoatの機能が不安定」「頂点カラーはテクスチャより扱いづらい」などの問題がありますが、色々と可能性を感じる楽しい検証でした。
3DCoatは万人にお勧めできるツールとは言い難い印象はありますが、他にはない変わった機能があったりするので、色々と試すにはとても面白いツールだと思います。この紹介記事で3DCoatに興味をお持ちいただければ幸いです。

ありがとうございました。


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