谷間が強調されてしまった話



私は小学生の頃、勉強もスポーツも他の子より長けていて、神童と呼ばれるほどであった。
テストで100点は当たり前。低学年時は解けない問題などほぼなかった。

小学校3年生の頃私はワンピースの漫画にハマっていた。単行本は全て読んでいたが、続きが気になり週刊少年ジャンプを初めて買った。ワンピース以外の漫画は見たことがなかったので、ついでに他の漫画も見てみた。ナルトやブリーチなど聞いたことのある漫画の中に、衝撃的な漫画がはさまっていた。
それは「いちご100%」という漫画だ。知らない人のために説明すると、女の子たちが沢山書かれているちょっとエッチな漫画だ。私は当時いわゆる優等生で、そんなエッチなものは見てはいけないと思っていたが、こっそり見てしまった。そこには女の子が胸を寄せて、谷間が描かれているシーンであった。恥ずかしながら、その時初めて「谷間」という言葉を知った。

その数日後、私は母のススメで近くの学習塾の実力テストを受けてみることになった。初めて学校以外でテストを受けるため、とても緊張して行ったが、こじんまりとした学習塾で、先生とマンツーマンだったので少し安心した。科目は国語と算数だけで、先生は好きな方からやっていいよと言ったので、まず得意な算数を受けた。簡単だった。そりゃそうだ、神童なのだから。そして次に国語のテストを受けた。最初に漢字の読み書きの問題が何個かあった。余裕で2、3問解いて漢字の読みの問題を見た時に、衝撃が走った。なんと、数日前いちご100%で見た「谷間」という字の読みを答える問題だったのだ。私はとても考えた。まず、「谷間」という漢字はいわゆる自然の山の谷の中を意味する谷間と、おっぱいの山の谷の中を意味する谷間があると考えた。そこで私は二つの選択に悩むこととなった。

1.山の谷の中を意味する谷間と、おっぱいの山の谷の中を意味する谷間は、どっちの読み方も「たにま」である。
2.山の谷の中を意味する谷間は別の読み方をし、おっぱいの山の谷の中を意味する谷間は、「たにま」である。

1を選ぶのはかなりリスクが高い。2を選ぶにしても、山の谷の中を意味する谷間の読み方がわからない。私はとりあえずこの問題を後に回し、残りの問題を余裕で解いた。
残る時間は5分。1を選ぶか2を選ぶか考えたニョッキ少年は、結局2を選びこの問題を空欄で出したのだ。
結果は算数が100点、国語が98点だった。しかしニョッキ少年はその時気づいてなかった。ニョッキ少年は神童なため解けない問題はない。谷間を空欄で出したことにより、谷間だけの減点。谷間がより強調されてしまったのだ。強調された谷間は、当然先生の視界に強く映ってしまったのだった。先生も、「谷間…わからなかったね、惜しいね!」と今にも笑いそうな顔でニョッキ少年を励ました。
ありがとうございました…そう呟き学習塾を後にした。

空を見上げると陽は落ちかけ、カラスが帰りを急いでいるようだった。ピンク色の空に影を帯びた山々は、不覚にも谷間をくっきりと見せていた。そんなある日の思い出。

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