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あなたは合理的な人間ですか?

 こんにちは。突然ですが、あなたは合理的な人間でしょうか。古典派経済学・新古典派経済学では、人間は合理的な生き物であると考えて様々な理論を構築してきました。それに異を唱えるのが、心理学の知見などを経済学に取り入れた行動経済学です。ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンさんが有名ですね。今回はそんな行動経済学についての論文
「APPLICATIONS OF BEHAVIORAL ECONOMICS IN UNIVERSITY LIFE」
(GEORGE NICULESCU, 2017)
を紹介していきたいと思います。
*適宜意訳しているのでご了承ください。

1.アブスト


【アブスト】
 この論文では、行動経済学の位置づけと役割について論じるものである。古典派経済学は行動経済学に批判されてきた。これまで私たちは、人間は合理的で情報に基づいて論理的な判断を下すと考えてきた。しかし、実際の人間は複雑かつ認知に限界があるから、軽率な決定をしたり判断に混乱したりする。結果、 経済学では理解できない行動や振る舞いにより失敗をもたらす。 
 この論文では、大学生活における意思決定プロセスの個々人の振る舞いについて評価を試みる。
 また行動経済学のいくつかの実験を記載する。これらの実験は、大学生活のおけるものであり、「意思決定において完全に合理的な人間が存在する」という仮説とホモ経済学の合理的存在の前提のみに基づく新古典派の経済理論およびモデルに異議を唱える。
CONSTANTIN BRÂNCUŞI" UNIVERSITY OF TÂRGU-JIU大学の学生との間で行われた実験は、「完全な合理性」・「選好の安定性」・「完全情報」・「市場効率」の仮説に関連した試みである。この論文で使用する調査方法は実験です。この研究結果は、学術的な管理に役立ちます。

2.内容について

<行動経済学は現代経済学問題の解決策である>
 行動経済学が現代経済学と異なる点は、5つある。
Ⓐ個人は判断に必要な完全情報をめったにもたない(新古典主義合理性の意味で)
Ⓑもし個人が完全情報を持っていたとしても、合理的決定を行うための関連情報と無関係情報の識別をいつもできるわけではない。
Ⓒ個人は行動指針から生じるすべての可能なオプションを把握することはほとんどなく、実際には、可能なオプションよりもはるかに少ないオプションを評価して優先順位をつけるようにしている。
Ⓓ個人がイベントの発生確率または意思決定の意味を正しく計算するために必要な数学的知識を持っていることはめったにない。
Ⓔたとえこれらの情報を持っているときでさえ、個人は定量化が難しいと思うので、ヒューリスティックに基づく直感的な近似で計算結果を歪め、非合理な決定をする。


ヒューリスティック・・・経験則に基づいて判断すること。判断に至る時間は早いが必ずしも正しい訳ではなく偏見が含まれていることが多い。

<最近の経済・金融危機は行動経済学だけで説明できる>
 2007年の金融危機は非合理的な考えが引き起こしました。
当時、人々は支払い能力を大きく超えるローンを組むことができました。将来の返済利率に対する合理的期待が個人の所得水準よりも高くなるにも関わらずに。
 結局、価格の上昇が続き、収入が差し迫っているにも関わらず、非合理的な選択を下しました。
 この非合理的な選択は、不動産市場の価格上昇トレンドを人工的に支えました。2007年の債務不履行の額は経済を崩壊させるのに十分な額になっていた。

3.実験について

<実験>
①「経済理論の基礎である明確に定義された選好は現実によって否定される」
 大学内には、寒い時期に高価だが防寒性の低い服を着ている学生がいました。寒さは健康にとって好ましくないため、この学生の行動は非合理的な選択であり選好の不確実性を示す例になっている。
②「目標に近づくにつれて、目標へのモチベーションは変化する。」
 良い成績でセッションを終えるよう提案された学生がいました。彼らは合計6つのテストのうち最初の4つのテストで最高得点を与えられると、最後の2つを最大の成績で終えるために学習努力をし多くの犠牲を払いました。少なくとも30%以上の人が試験科目を取得/理解するために努力した。
➂「損失による痛みは、獲得による痛みよりも大きい」
 公共マーケティング学部の学生を3年間テストしました。試験に不合格だった場合の損失はとても大きいことが分かりました。
1から100ポイントのスケールで、試験の損失の程度は次のようになる。
平均92ポイント、および同じスコアで最大スコアを取得する満足度/喜びの値は、65ポイントで定量化(平均)される。つまり、質問された学生にとって、試験は、最高点(27%)に対する満足度よりもはるかに苦痛である。
例)奨学金、株の塩漬け
④「参照点ー同一製品に対して同じ状況下で異なる金額を支払う」
 学食に地元で有名なレストランを招き、コーヒーを販売してもらった。品質は食堂にあるコーヒーマシンと変わらないが、レストランのコーヒーの値段は倍である。学生は皆レストランのコーヒーを購入した。
例)ブランドの力:スタバで高いコーヒーを買うのと同じ
⑤「マッチング原則ープログラムに独自の利点がある、またはそれが私たちにとって調整されていると感じるときモチベーションが上がる。」
 学生は公務員と地方市民の関係に関する調査を行うプログラムに参加した。プログラムの平均スコア:7.40
次に都市開発戦略(前者のプログラムより難易度が高い)に取り組んだ。この時は、学生へのアプローチを個人化した。
     プログラムの平均スコア:8.05
⑥「大数の法則」
 国際関係学部とヨーロッパ学部の学生に、セミナー前に英語の知識に関する自己評価(1~10)をしてもらった。
平均:8.20
次にセミナー後に再度自己評価(1~117)をしてもらった。
平均:7.35
広い評価範囲を用いたものより、評価範囲の狭いものでは自己評価は大きくかつ主観的になる。

4.まとめ
 

 行動経済学面白いですね!世の中の見方が変わってくるなと思いました。企業の戦略に乗って不必要な買い物をしないようにしたいものです。(おそらく不可能でしょうが(笑))
  論文の内容はとても面白かったのですが、実験のデータが明示されていなかったので説得力に欠けてしまうなと読んでいて感じました。
今回は長くなってしまいましたが、最後までお読みいただきありがとうございました。
*間違いがあれば教えてください。お願いいたします。

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論文へのリンクです。また行動経済学の書籍も紹介しておきます。

「APPLICATIONS OF BEHAVIORAL ECONOMICS IN UNIVERSITY LIFE」
(GEORGE NICULESCU, 2017)
https://ideas.repec.org/a/cbu/jrnlec/y2017v1specialp105-110.html

『予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」』 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫) 
ダン アリエリー (著), Dan Ariely (原著),
https://www.amazon.co.jp/dp/4150503915/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_M4sREb8BWXVDN

『ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? 』
(ハヤカワ・ノンフィクション文庫) (日本語) 文庫 – 2014/6/20
ダニエル・カーネマン (著), 村井章子
https://www.amazon.co.jp/dp/4150504105/ref=cm_sw_em_r_mt_dp_U_U6sREb3VM84RV

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