vol.5 金融機関との上手な付き合い方

銀行との最初の面談

ある晴れた朝、田中さんはついに銀行との面談の日を迎えました。スーツに身を包み、手には事業計画書と会社の財務資料を持っています。これまでに事業計画書をしっかりと作成し、会社の信用力も少しずつ高めてきた田中さんですが、やはり初めての融資交渉に少し緊張していました。

「銀行との付き合い方って、一体どうすればいいんだろう？」田中さんは不安に思いながらも、佐藤さんからのアドバイスを思い出しました。

「田中くん、銀行とはただの『お金の貸し借り』の関係じゃなくて、長い付き合いが大事だよ。彼らもビジネスのパートナーなんだ。」佐藤さんの言葉が頭をよぎります。

銀行との信頼関係が大事

田中さんは、まず銀行担当者に自己紹介を済ませた後、会社の概要を説明しました。銀行担当者は穏やかな表情で話を聞きながら、「この会社は信頼できるか」を判断しているようでした。

銀行とのやりとりでは、単に資金を借りるだけでなく、信頼関係を築くことが大切です。田中さんは、佐藤さんのアドバイス通り、信頼を築くために次の点を意識しました。

①誠実なコミュニケーション

田中さんは自分の会社の状況や資金ニーズについて、包み隠さず正直に話しました。「銀行は、情報を隠したり誇張したりするとすぐに見抜く。誠実に話すことが大事だよ」と佐藤さんに言われていたからです。

銀行担当者も田中さんの率直な態度に好感を持った様子で、詳しくヒアリングを始めました。「資金の用途はどのような計画ですか？」「返済計画はどのように考えていますか？」といった質問に対して、田中さんは事業計画書に基づき、明確に回答しました。

②透明な財務状況の提示

次に、田中さんは会社の財務状況について詳しく説明しました。売上、利益、そして支出に関する詳細なデータを見せ、会社が今後も安定した成長を見込めることをアピールします。銀行担当者は、田中さんの準備が整っていることに感心し、数字をしっかりと確認していました。

「しっかりした財務状況を示せば、銀行は安心する」と佐藤さんが言っていた通り、数字に基づいた根拠が銀行との信頼関係を築くために重要であることを、田中さんは改めて実感しました。

銀行との交渉のコツ

田中さんは面談を進めながら、銀行との交渉のコツを徐々に理解してきました。金融機関との付き合いには、いくつかのポイントがあることに気づきます。

①対等な関係を意識する

「銀行だからといって、怖がる必要はないんだな」と田中さんは感じました。銀行は資金を貸すことで利益を得ており、こちらは資金を借りて成長するビジネスパートナーです。対等な立場でコミュニケーションを取ることで、信頼関係が築きやすくなります。

田中さんは、借りる側というプレッシャーを感じすぎることなく、自分たちのビジネスに自信を持って話すことを心がけました。銀行担当者も田中さんの冷静さと自信に好印象を抱いているようでした。

②明確な返済計画を示す

銀行が最も気にしているのは、「貸したお金がきちんと返ってくるかどうか」です。そのため、田中さんは事前にしっかりと返済計画を練り、どのようにして融資を返済していくのかを具体的に説明しました。

「売上が伸びる見込みはありますが、保守的に見積もっても、返済は十分可能です。このように、毎月のキャッシュフローの中から確実に返済していきます」と田中さんは説明します。銀行担当者は、田中さんの慎重な返済計画に安心し、融資を前向きに検討してくれる様子でした。

③フォローアップを欠かさない

面談が終わった後も、田中さんは定期的に銀行担当者に進捗報告をすることに決めました。「銀行との付き合いは、1回の面談で終わるわけじゃない。継続的なコミュニケーションが大事なんだ」と佐藤さんの言葉を思い出したのです。

田中さんは、月に一度、会社の状況や進捗をメールや電話で銀行に伝え、信頼関係を維持する努力を続けました。これにより、銀行側も田中さんの会社の状況を把握しやすくなり、今後の資金調達や融資の継続に対しても安心感を持ってくれるはずです。

田中さんの融資が決定

数週間後、田中さんは銀行からの融資が承認されたという知らせを受けました。田中さんのしっかりした事業計画と誠実な態度、そして透明な財務状況が評価され、融資が実現したのです。
「やった！これで新しいソフトウェアも導入できるし、広告も打てる！」と田中さんは喜びます。

まとめ

金融機関との上手な付き合い方は、単なる資金の貸し借りにとどまりません。信頼関係を築くことが最も重要です。田中さんが実践したように、誠実で透明なコミュニケーションを通じて、銀行や金融機関と対等なビジネスパートナーとしての関係を築くことで、長期的な資金調達の成功につながります。

次回は、田中さんが「借入時の交渉のコツ」を学び、さらに有利な条件で資金調達を進める方法についてお話しします。