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大きくなれなかった10匹の仔犬とお母さん犬

思えば、ボクのご主人さまの無類の犬好きは、
あの時から始まったんだ

ご主人さまが小学校1年生、ボクと出会うずっとずっと前

……………

おうちの車の下に、お腹の大きいお母さん犬がどこからかやって来て、
そこでお産をしたんです

次の日、たくさんの赤ちゃんわんこが生まれていて、
お母さん犬は、御乳をやったり、仔犬のからだを舐めてやったり、
コロコロと転がって車からはみ出した仔犬を戻したり、
甲斐甲斐しく世話をする姿を見ることができました

ご主人さまは嬉しくて嬉しくて、小学校から一目散に帰ってきては、
何時間も犬たちと一緒に過ごしていました
黒、白、茶色、ブチ…数えてみたら仔犬たちは、なんと十匹いました
可愛くて可愛くてたまりませんでした

ところがある日、誰が通報したのか、
知らないおじさんが二人来て、うちの敷地に勝手に入り、
針金でお母さん犬と仔犬たちを捕獲して連れて行ってしまいました
お母さん犬は泣き叫ぶように吠えて抵抗していました
ご主人さまも、なぜ勝手に連れて行くのか、必死で止めようとしましたが、
7歳の子どものご主人さまが何か出来るはずもなく、
泣きながら見送ることしか出来ませんでした
その時は運悪く、家に大人が居ない時間でした

あとで教えて貰いました
あの二人のおじさんは保健所の人たちだったと

胸が引き裂かれる思いでした

……………

仔犬たちを世話していた
神々しく美しかったお母さん犬の眼差しが忘れられない…
この世に生を受けたばかりの可愛らしかった十匹の仔犬たちが忘れられない…

あの時、救けられなかった経験が、
ご主人さまの一生涯の十字架になりました
人間の身勝手な都合で虐げられる命を
見過ごすことはできないと

大人になったご主人さまは、
あの時の無力な子どもではないから、
自分の良心に従って生きると誓いました

ほんの少しの時間しか触れ合えなかったけれど、
お母さん犬と十匹の仔犬は、
虹の橋で私を待っていてくれるだろうか…

ご主人さまがそう思って暮らしていることを
ボクは知っているんだ




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