『七夕』※大人向け

「父ちゃん、撮れた、撮れたよ!」
首に巻いたタオルで額の汗を拭った私に、天体望遠鏡で天の川を撮影していたはずの息子の隼人が、突然元気良く声をかけてきた。
「お?どれどれ――」
私が隼人の手元を覗き込むと、少しピンボケした数枚の写真にうっすらと抱き合っている男女のような影が見える。
「お、織姫と彦星かな」
「織姫と彦星!――って二人は何してるの?」
不思議そうに私を見つめる隼人に、私は笑う。
「大人の言葉ではアイビキ、ってやつだな」
「アイビキ?!肉?!へんなの!」
私の答えに、隼人は大笑いしながら写真を振り回した。勢いが良すぎて写真が一枚舞い落ちる。
「おいおい、落とすなよ」
「うん!僕、お母さんに見せてくる!」
隼人がそう言って駆け去っていくのを見送った私は、足元の写真を拾って見る。
写真に写っていたのは、隣町のラブホテルの看板だった。
「さて、どうしたものか」
私は一人呟くと、再び首に巻いたタオルで額の汗を拭った。
(400文字)

※この作品は、ならざきむつろさんの『ものかきさんにちょうせんじょう。 』( https://note.mu/muturonarasaki/n/n1302d3ed591a )でのお題に再び挑戦してみたものです。 今回は七夕にちなんだ、ちょっとした大人の小ネタです。w(’~^;)b 

※一回目の挑戦はこちら!→ https://note.mu/nyaro/n/n091c17a04b8d


◇ならざきさんからのお題

①元となる文章をアレンジして違う作品に仕上げてください。
②文字数は元となる文章を大幅に超えないこと。
③元となる文章とある程度は対比させるようにすること。

●元となる文章

お題『夏休み』

「じいちゃん、有った、有ったよ!」 
首に巻いたタオルで額の汗を拭った私に、隣で手に持った石をつまらなさそうにハンマーで小突いていたはずの孫の隼人が、突然元気良く声をかけてきた。 
「お?どれどれ――」 
私が隼人の手元を覗き込むと、茶褐色の石の表面にうっすらと菊のような模様が見える。 
「お、菊石だな」 
「菊石!――ってなあに?」 
不思議そうに私を見つめる颯に、私は笑う。 
「あちらの言葉ではアンモナイト、だったかな」 
「アンモナイト?!うそ?!やった!」 
私の答えに、隼人は石を握りしめながらバンザイした。勢いが良すぎてふらついている。 
「おいおい、転ぶなよ」 
「うん!僕、お父さんに見せてくる!」 
隼人がそう言って駆け去っていくのを見送った私は、改めて手元の石を見つめる。
石に浮かんでいるのは、何かの骨のようだった。 
「さて、どうしたものか」 
私は一人呟くと、再び首に巻いたタオルで額の汗を拭った。 
(400文字)


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