『夏休み』

「じいちゃん、取れた、取れたよ!」  首に巻いたタオルで額の汗を拭った私に、キャプチャービームで地球から牛を集めていたはずの孫のトヤハが、突然元気良く声をかけてきた。 「お?どれどれ――」 私がトヤハの手元を覗き込むと、バタバタと暴れる獲物の胸に豪華なバッジが見える。 「お、大統領だな」 「大統領!――ってなあに?」 無邪気に私を見つめるトヤハに、私は笑う。 「あの国の言葉ではプレジデント、だったかな」 「プレジデント?!大物?!やった!」 私の答えに、トヤハは大統領を握りしめながらバンザイした。大統領はすでにグッタリとしている。 「おいおい、潰すなよ」 「うん!僕、お父さんに見せてくる!」 トヤハがそう言って駆け去っていくのを見送った私は、改めて地上をサーチしてみる。地球の全域で核ミサイルが飛び交い、すでに生命体の75%が消失していた。 「さて、どうしたものか」 私は一人呟くと、再び首に巻いたタオルで額の汗を拭った。 (400文字)

※この作品は、ならざきむつろさんの『ものかきさんにちょうせんじょう。 』( https://note.mu/muturonarasaki/n/n1302d3ed591a )でのお題に挑戦してみたものでした! すでに高レベルで奇抜な応募作品が多すぎるので、あえて手堅いオーソドックス路線で真面目に書いてみましたよ!(’~^;)b  

◇ならざきさんからのお題
①元となる文章をアレンジして違う作品に仕上げてください。
②文字数は元となる文章を大幅に超えないこと。
③元となる文章とある程度は対比させるようにすること。

●元となる文章

お題『夏休み』

「じいちゃん、有った、有ったよ!」 首に巻いたタオルで額の汗を拭った私に、隣で手に持った石をつまらなさそうにハンマーで小突いていたはずの孫の隼人が、突然元気良く声をかけてきた。 
「お?どれどれ――」 
私が隼人の手元を覗き込むと、茶褐色の石の表面にうっすらと菊のような模様が見える。 
「お、菊石だな」 
「菊石!――ってなあに?」 
不思議そうに私を見つめる颯に、私は笑う。 
「あちらの言葉ではアンモナイト、だったかな」 
「アンモナイト?!うそ?!やった!」 
私の答えに、隼人は石を握りしめながらバンザイした。勢いが良すぎてふらついている。 
「おいおい、転ぶなよ」 
「うん!僕、お父さんに見せてくる!」 
隼人がそう言って駆け去っていくのを見送った私は、改めて手元の石を見つめる。
石に浮かんでいるのは、何かの骨のようだった。 
「さて、どうしたものか」 
私は一人呟くと、再び首に巻いたタオルで額の汗を拭った。 
(400文字)


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