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消防車だってカウンタックだってバルイーグルだって赤い。幼い僕に「カッコイイものは赤い」と父は言い、僕に赤、妹に紺のセーターを買った。大学時代、バイト代を奮発するダッフルコートの色には迷わず赤を選んだ。
扉が開くエレベーターが見えたので小走り気味に乗り込むと、朝の実家の洗面所へワープした。出勤前に髪を整える大きな父の後ろ姿。“アブラ”と呼ばれていた懐かしいタクティクスの残り香が僕の鼻をかすめたからだ。