「原作と違う」プラモデル、フィギュアライズアンプリファイド
「原作と同じ配色」「原作と同じフォルム」……世の立体物が「原作」に近づいたものを目指しがちなのは、子供の頃のあの日見たヒーローやロボの雄姿を求めるファンの気持ちを大切にしたいからでしょう。
でも……大人になって改めて作品を見直してみたらこう思ってしまうこともあるかもしれません。
なんか、ダサい。
あなたが子供から大人になるまでの価値観の変遷、あるいはデザイン観のアップデート……そういったものを踏まえていくと「なんかダサい」という感情に至ってしまうのかもしれません。
バンダイ(バンダイスピリッツ)もそこをよく理解しているのか、現在販売されているファーストガンダムのHGやMGやRGは、メカデザイナーのカトキハジメらによる現代的なリファインが加えられた「原作とは違う」デザインになっています。(もっとも、そもそもガンプラは時代ごとの流行を取り入れながらアレンジし続けていく方針を採っているように思います。タカラトミーでいうところのリカちゃん人形みたいなものです)
勿論変わらずに好きであり続けたり、「ダサいのが逆にいいんだよ!」と思っていたりする人もいることは、メーカーも重々承知です。
現に、そういう人向けに当時のデザインに近づけた旧キットやロボ魂バニメが売られているのですから。
今のファーストガンダムのプラモデルが目指している「原作と違うけどカッコいい」思想を明確にして尖らせたのが、「フィギュアライズアンプリファイド」というシリーズです。
このシリーズは「原作リスペクトの元、キャラクターの魅力を“増幅”させた」コンセプトでキャラクターを再設計する、というもので現在はデジモンとバットマンが出ています。
これは新作のベルゼブモンなのですが、見ての通り原作のものよりもずっとキトンキトンとして悪魔的で、よりハードロックなデザインになっています。
とはいえベルゼブモンの象徴的な武器である二丁の「ベレンヘーナ」はしっかり存在し、背中と脚にマウントすることが出来ます。
頭のケーブルと尻尾はリード線を使って作成する方式が取られており、表情付けが可能です。
写真は眼球部分以外シール・塗装は施していません。上記画像の赤丸で囲った部分はシールで色を補う部分です。
金銀パーツの成型色も十分に綺麗に感じられました。塗装せずとも、メタリックな質感が出ていると思います。
かなり肥大化した手になっていますが、差し替えパーツを使うことでベレンヘーナを保持しガンアクションを楽しむことが可能。
デザインがデザインだけに動かしていてカッコよく、未塗装での色分けもばっちりでスタイリッシュなポージングが楽しめる良キットだと思いました。
ただ脛にバシバシっと走る豪快な合わせ目は気になるので、腕に自信のある人は合わせ目消しにチャレンジしてみるのも一案です。
……と、アンプリファイドの新作であるベルゼブモンを満足げに組み立てたところで一抹の不安が過ります。
日和ってはおるまいな?
アンプリのベルゼブモンは確かにカッコいいアレンジが施されている。アンプリのコンセプトからも外れてはいない、はず。
でも、そもそもベルゼブモンはいろいろなところでめちゃくちゃアレンジされてる存在なんですよ!(人気だから)
安牌でアレンジ経験がある人気キャラを出すというのは商業的にはわかる。
だけど、私がアンプリに求めていたのは最初のウォーグレイモンのような「こう来るか!」という驚きだったんだな、と組み立てて気付かされた。
そのウォーグレイモンも「今度は原作通りに作ったからね」という触れ込みで新しくプラモが出し直されて店頭に並んでいる。
バンダイ的にはアンプリよりもそちらに主力を置いているらしく、今後もデュークモンやマグナモンが「原作に近い」デザインで売られる。
「アニメと違うけどカッコいい」は最近のMGガンプラやHMMゾイドや中華キットのテッカマンなんかがやっているから、アンプリがやらなくても別に良かったのかもしれない。
究極な話、原作をなぞるかなぞらないかはそれぞれのユーザーの手に委ねられているものがプラモデルだから、ユーザーの好きに塗って好きに改造すればいいじゃん、となるのかもしれない。
それでも。
「原作の見た目とは全然違うけど、カッコいいでしょ」というフロンティアスピリッツを公言したアンプリの灯火が消えそうなのは、ちょっとした寂しさを覚えなくもない。
まあ、シリーズが終わったと公言された訳ではないし、ここから新しいアンプリデジモンやアンプリスーパーマンやワンダーウーマンが出る可能性だって否定できない。
期待しよう。
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