1/72ビッグトニーのプラモデルがすごかった
「バンダイの青田買いに4000円近く出すのはなあ……」と思っていたビッグトニーをうっかり買ってしまった。
ちょっと厚底のHGガンプラくらいのサイズの箱を開けると普通のプラの外装と、ABSのてかてかしたフレームのランナーが入っていて「なんだか一昔前のガンプラみたいだなあ……」と感じた、
のだが、一度手を付けたら否が応でもそれは間違いだと実感させられる。
まず何と言っても曲芸的なジョイントである。
腕一本取ってみても、この複雑怪奇なジョイント!
各部が曲がったり回ったり伸びたりする様はサーカス的といって過言ではない。
脚部なんかもう変態としか言いようがない。
こういうロボキットでよくある両端にピンの付いた二重関節なんて一つもない。
代わりにあるのは蛇腹状に組み合わさった機構で、これがぐねぐねと動くことで足の可動が演出される。
これらはビッグトニーが可変機で、ちゃんとトランスフォームするために考え抜かれた機構なのだが、だからと言って居心地の悪いプロポーションになっていないのには本当に驚いた。
建設重機チックなどっしりとしたフォルムはかなり見応えがある。
さて、目玉の可変ギミックだがなんと差し替えパーツはごく少量で、ほぼ完全変形といっていいレベルである。
特に脚部をダイナミックに変形させていくのは複雑だが驚きがある。
変形させることで隠れていたパーツが露出していき「なるほど!だからここにこんなパーツがあるのか!」と感嘆させられるのもポイント。
可変機構を抜きにしても、ロボプラモのセオリーを大きく逸脱した組み味は非常に斬新で楽しい。
スケモ兵士フィギュアチックなバックパックも魅力的で、細部の塗りごたえがありそう。
さらに特筆すべきポイントはGランナー、一体成形の履帯である。
軟質プラで出来た履帯をランナーから切り取って巻き付ける工程がまさか2021年のバンダイ製キットにあるとは誰が思っただろうか。
戦車プラモのキモであり難所でもある履帯の組み立てで「じゃあ軟質プラで全部作るからあとは切って巻くだけでいいよ」と言われるのは、スケモ最大級の悩みをバンダイが力技で真正面からぶち抜いていった感がある。
しかも接着剤も何もいらずにがっちり固着してくれるから本当に舌を巻くしかない。
オモチャ的側面から見ると、かなり捻くれた可動だが可動域は十分すぎるほどで動かしていて楽しい。
重心が偏っているのであまり無茶なポーズを取らせると自立しなくなる難があるが、股間にはちゃんとステージジョイント用の3mm軸穴があるので心配は無用。
何よりも1/72というスケールが嬉しい。
1/72といえばスケールモデルはもちろんのこと、HMMゾイドや、そして同期の境界戦機のキットのスケールということで、作品の枠を越えてブンドド相手は豊富にいるのだ。
スケールを無視して並べるのも楽しいけれど、やはりスケールが統一されたものを並べるのは夢のクロスオーバーといった感じでかなりテンションが上がる。
難点としては、まずフレームがABSなので塗装に一手間かかるところ。フレームの露出が多めなのでメタリックに塗りたいという人も多いだろうが、そのまま塗料を塗ると割れが発生する恐れがある。
また、シール枚数は多めで主にランプ部分やシリンダー部分を補う。
ランプはともかく、シリンダー部分のシールはパーツ干渉で剥がれてくる恐れがあるため、ここは塗装してしまった方がいいと感じた。
ガイアノーツから専用カラーセットが発売されているので、調色に迷ったらこれを使うのをおすすめする。
ただ、塗装しなくても十分見栄えのあるようには仕上がる(写真のビッグトニーはシール先貼り部分以外無塗装)のでシール貼り苦手でも安心してほしい。
下手なMGくらいする値段に尻込みしてしまいそうだが、値段以上の組み立ての楽しさが詰まっている今年最もヤバいキットだと思う。
優等生タイプが多いバンダイキットの中では、ヨーダのプラモに並んでユーザーに挑みかかってくる異才児と言って過言ではない。
アニメを観ている人はもちろん、全然観てない人も、ガンプラモデラーもスケールモデラーも組む価値はあるキットだろう。
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