高配当株、低PBRバリュー株の基本ーPBRの使い方

ー高配当、ディフェンシブ銘柄は数年のトータル損益で考える


低PBR、高配当株投資で重要なのは

1,現金や有価証券などの換金性の高い資産が十分あるか
2,キャッシュフローを伴った利益が十分出せているか
3,配当が無理なく出せているか

ポイントとなるのはPBRと純資産である。

PBR=株価÷一株純資産

以下のようなA社という会社があるとする。
株価1000円
一株純資産(BPS)1000円
一株純利益(EPS)100円
配当50円(配当利回り5%)
PBR=株価1000円÷BPS1000円=1倍
PER10倍


この会社は1年間の利益の半分の50円を株主に配当、残り半分を会社の現金として蓄えている状態だ。
3年間この状態が続くと、この会社の純資産は1年間の会社の利益100円のうち投資家に50円配当を出した残り50円が3年分積み上がるので150円増える。


10年続くと50円×10年=500円会社の純資産が増える。


3年続くと
PBR=株価1000円÷一株純資産1150円=0.87版
10年続くと
PBR=株価1000円÷一株純資産1500円=0.67倍
となる。


このままの株価でも損することはないが、時間とともに割安になるので、通常は相場全体や個別の材料などにより、どこかのタイミングで株価が上がる。

3年間これが続くとこの株を1000株100万円分買った投資家は50円×3年=150円の配当がもらえて、配当金15万円が得られる。
10年なら配当金50万円が得られる。


株価が850円に下がったとしても含み損15万円、もらった配当金15万円で損はしない(手数料・税金は考えないものとする)。
実際の運用では何年も待たなくても、株価が10%~20%以上短期で上昇すれば利益確定すればいいので、これはあくまで株価が長期間上がらなかった場合の話である。


株価が上がらなくても割安なのだから損切りする必要はなく損はしない。
むしろさらに割安になったのだから買い増しするところである。
数年のうちに上がればいつでも利益確定できる。
これが短期的なバリュー投資の基本的な考え方である。

これが失敗するのはどんなときか。
1,会社の減益による一株利益の減少
2,配当金が大きく減少
3,赤字で会社の資産が大きく減少

例では一株利益100円に対して配当50円と、利益の半分を配当している。
しかし一株利益が50円に減ってしまった場合、50円配当してしまうと利益をすべて配当することになる。
こういった場合、キャッシュフローに余裕がない状態なのでリスクが高くなる。


そこで通常は配当金を減益前の利益の50%配当として、25円に減らすことになる。
そうすると配当利回りは2.5%に半減してしまうので、もしこれが続くなら一般的に株価は下落する。


株価がどこまで下がるかを考えたとき、現在と同じ配当利回り5%の値段まで下がると考えると、株価500円に下がることになる。
しかし利益回復の見込みが全くないような場合を除き、通常そこまでは下がらない。
なぜならこの会社は一株純資産1000円を保有しているからだ。

株価500円に下がると、
PBR=株価500円÷BPS1000円=0.5倍まで下がり、資産に対して株価が割安になる。


この減益が1年間だけで、翌年の利益や配当が元に戻るとすると、配当利回り10%の500円でこの会社の株を買えるというのは激安になるからだ。


配当の減少が一時的と見ている投資家が多ければ、PBRや会社の資産を頼りに、利益回復までの割安な時期に仕込もうとする。


だから配当利回りだけでなく、PBRの低さも重要なのである。
厳密にはこの純資産の中身を精査する必要があるが、おおむねPBRを見ておけば問題ない。

資産内容を詳しく見る場合は、
1,純資産のうち現金や有価証券が多いか
2,有利子負債が少ないか
3,営業キャッシュフロー(+フリーキャッシュフロー)が十分な黒字か
4,資産の多くがのれんだったり、棚卸資産(売れない商品の在庫)が増えすぎていないか
5,自己資本比率が同業他社に比べて極端に低くないか

などを見る。

さて、減益ではなく赤字に転落した場合はどうだろう。
1年だけの大赤字で翌年からV字回復なら問題ないが、赤字を出した後も以前の利益に戻らないような問題を抱えている場合は損切りを検討することになる。


赤字が続けば会社の純資産も減少し、同じ株価でも年々株価は割高になってしまい、下落が続く可能性は高いだろう。
赤字か黒字かは重要なポイントとなるのである。

まとめると
黒字の高配当株やバリュー株の場合
1,利益が減った
2,利益が減って配当も減った
3,利益が減って配当も減り、赤字や利益以上の配当で会社の資産も減った


この3つの段階があり、2までは大きな問題がないが、赤字や配当の出し過ぎで会社の資産が減り出すと、株価の維持や回復も遅れるので警戒が必要である。

2020年現在のJTなどは1の段階で配当を維持しているが、利益以上の配当を出さないと高配当を維持できない段階になりそうな点が警戒されて、ここ数年株価が下落しているのである。


3の段階まで織り込んで売られていると考えられるので、実際に3の段階が確定したときに株価がどうなるかはわからない。
悪材料出尽くしで上昇となる可能性もある。

ーPBRの使い方


株価の下値はどうやって判断するか
高配当株やバリュー株、低PBR株の場合、過去のその会社のPBRの推移を見る


PERやROE、利益率や成長率、様々な指標があるが、まずは資産を重視して過去の下値と上値を見る。


PERなど1年の利益を元に算出する指標はぶれが大きく、バリュー株の場合は重視しない投資家も多い。
黒字ならそのうち上がればいいと考えているからだ。


それに対して会社の資産で株価を見る場合、大きな赤字がなければ安定感があり、下値上値の目星もつけやすい。



PBR1倍は安いのか高いのか?


それを見るために過去のその会社のPBR推移を見る。
不動産と銀行と小売業とネット企業では大きく異なるのは当然なので、おおよその水準を把握するために業種の平均や類似企業のPBRも見ておく。


過去のPBR推移が0.5倍から1倍の会社であれば、PBR1倍は何か大きな上昇材料がなければ割高な可能性がある。
しかし過去の推移がPBR1倍から2倍の会社であれば、PBR1倍付近は買い場の可能性が高い、といったように判断する。


PBRやPERの推移はSBI証券のスマホツールやバフェットコードなどで無料で3年分は見ることができる。

黒字のバリュー株の下値は資産で見る、簡易的にはPBRの過去推移が役立つのである。


黒字を継続している場合、毎年会社の資産が増えるのだから、PBRは低下する。
つまり放っておいても時間とともに株価は割安になっていくのである。
株価が下落しても、逆張りで少しずつ買い下がって、大きく上がるタイミングを待てばいいだけだ。


極めて確実性の高い投資法である。


しかし成長株や仕手株、材料株のように派手に上がることは少ないし、時間がかかる。


じっくり待てる人だけが利益を上げられるのである。






ツイッター
https://twitter.com/nyantama2323





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?