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「ハード&ルーズ 全8巻/狩撫麻礼・かわぐちかいじ」

ずっと貸していただいていた作品をじっくり読み込みました(長らくお借りしてすみません…感謝しています)。
狩撫麻礼作品にハズレなし…
主人公の私立探偵・土岐正造を通じて見えてくるのは狩撫麻礼先生ご自身の姿だった。
独り身から中盤にかけて数人が勤務する探偵事務所を起こすのだが、ある回で突然ちゃぶ台ひっくり返して、独りに戻るあたりとか最高。
こんな、言語化しようもない「大人の男の孤独」を表現できうる作家って今、いるのだろうか?
この作品が描かれたのは80年代半ば、バブル絶頂期へと向かう日本が一番浮かれていた時代。そんな時代の空気の居心地の悪さ、自身との相性の悪さに、苛立ちを隠せない様子も伝わってくる。

このハード&ルーズの主人公・土岐正造もハード・コアの右近も、オールド・ボーイの主人公も不器用で、どこか違和感を感じながら自分を曲げずに生きている。
作品を通じて、狩撫麻礼先生はご自身の自画像を描いていたのかもしれない。

また土屋ガロン名義の原作オールド・ボーイの「オチ」に当たる表現もこのハード&ルーズの巻で2話ほど見かけた。学生時代、よほど印象に残るような体験だったのだろうか。
随所に哲学的な表現があり、生きることへの問い、そして今の自分の立ち位置も再確認させてくれる作品。

またかわぐちかいじ先生の絵の表現力、その生々しさも底知れず素晴らしいと思う。心からおすすめです。

※note、スマホでしかまともに読み込めなくなってしまいました。しばらくしたら辞めちゃうかも。

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