フレンチトーストの好み
ダステイン ホフマンとメリル ストリープが共演した、「クレイマー クレイマー」は、なかなか細部まで気配りの行き届いた映画でした。妻に蒸発された夫が、子供の為にフレンチトーストを作ろうとして、台所をごちゃごちゃにしてしまう最初の方のシーンと、子供のために料理するのに慣れた後半のシーンの手際よさ。ナレーションも字幕もなくても、彼がどれだけ頑張って料理をしてきたのかが、わかります。
もともとフレンチ・トーストはパン・ベルデュというフランスのおやつです。「昨日のパン」という名前から想像がつくように、固くなってしまったパンの再生料理です。バゲットなどのフランスパンは、粉、水、塩、イーストしか入っていないので、すぐに固くなってしまうのです。フランスのレストランでは、昼用と夜用と2回パンを買っているそうです。
合理的なフランス人ですから、パンを固くなったから捨てるのではなく、別の形で活用するわけです。牛乳と卵を合わせた液につければ、固いパンも柔らかくなるし、バターで焼けば風味もいいですからね。何より、小麦がおいしいので、美味しいおやつになるです。
実家の母が作ってくれたフレンチトーストは、卵と砂糖が多めで、卵焼きのように甘かったものです。母は「卵パン」と言っていたので、子供の頃はそういう名前のものだと思っていました。
自分で作るようになると、私のは砂糖控えめで、あまり甘くはしません。代わりに、メープルシロップをたっぷりかけます。気分は、「大草原の小さな家」のローラです。シリーズの中に、メープルシロップを煮詰めて、雪の上に広げ、飴を作るのがありました。雑味のない、美味しい飴だったと思います。食べたい・・・・。
子供も、小さいうちから食べなれているので、私の作るフレンチトーストが好きです。母の作る甘いフレンチトーストが好きなのは、甥っ子。高校や大学のころは、一斤ぺろりと平らげたのだそうです。
母の味を受け継がなかったことを、少し申し訳なく思っていたので、甥っ子がそんなに母の味を好きだと知って安堵しました。
たかが、フレンチトースト。されどフレンチトースト。
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