見出し画像

アニメ「ヨルムンガンド」感想

放送 2012年
1期 12話
2期 12話

―――僕は、武器商人と旅をした。
両親を戦争で失い、武器に関する一切を憎む主人公の元少年兵ヨナは、神の悪戯か、若き女性ウェポンディーラー、ココ・ヘクマティアルと、その部下である「ヒトクセもフタクセもあるが優秀な」私兵8人と世界各地を旅する事になる。

まず、武器商人が主人公という設定が他にあまりなくて、いいです。
武器商人と言えば、まあ悪党ですよ。
悪党が主人公の物語はけっこうありますけど、だいたいは「悪党だけどイイ奴」で。
泥棒だけど人は殺さないルパン。
殺し屋だけど、むやみに人を殺さないシティーハンターとか。
例え、古くてすいません。
さて、それではこの作品のココ・ヘクマティアルはどうか。
女子高生みたいな風貌で、いつもニタニタ笑っている。8人の仲間たちも全く殺伐とした雰囲気はなくトボケたジョークを言い合っています。
しかし、行く手を邪魔するものは容赦なく殺す。
「限りなく黒に近いグレーな奴ら」といったところです。
どっちに転がるか(黒か白か)物語の進行とともに、ハラハラとさせられるんです。
こういうスタンスの主人公、他にないですよ。
アニメとしてはかなり挑戦的でいいです。
この作品で僕が一番好きなキャラクター、レーム(石塚運昇)の言葉
「ああ、でも俺、君の武器商人を恨むってスタンス、イイと思うんだよね。技術を吸収しつつ、ココにも俺らにも飲み込まれねえぞって生き方、ありなんじゃねえ」
序盤でヨナに向かって言ったセリフです。
これ、作者が視聴者に向かって言っている言葉でもあるんです、きっと。
この作品のキャラクターたちに、100%心酔して見ないで、距離をおいて見てねって。
やはりこれはそういった判断のできない子供には見せてはいけない、大人のアニメです。

レーム
「やってやられてやりかえして。でも俺がやられた時には、やりかえさなくていい」

レーム

さて問題のラストについてです。
ネタバレしますので、まだ見てない人はこの先読まないように!!!!!
観てから再度是非読んでください!!!!!

ヨルムンガンド計画の説明は省略します。この先は観た人のみを対象としての話ですので。観た人たちと語りたい考察として書きますから。

僕はココの考え、全面的に反対です。
ヨナは70万人の犠牲が出ると聞いた瞬間、ココに銃を向け、「間違ってると」と言い残し去っていきます。
他の7人は黙って従います。
やっぱりココは、悪党だった!「地球を守るために人類を滅ぼす」みたいな理論を展開するロールプレイングゲームのラスボスみたいなことになってきて・・・。
他の人のレビューではけっこう賛成派もいるようです。
その意見の一つに「もともと悪党だったのに、急に正義っぽい考えになって反旗をひるがえしたヨナが解せない」というものがあります。
ヨナは、「多くを救うために、少ない犠牲は仕方なし」という考えが間違ってると思ったのでしょう。
それもそうですが
僕の意見としては、「一人の独断的考えで世界を変えようとする事」が間違っていると思います
それはどんなに良いと思われる名案であっても、一人の独断で決定することではない。
総理大臣でも、大統領でもそれはしてはならない。
世界平和とは違う価値観を理解しようと努めることでしかなしえないと思うのです。
自分の考えを強引に押し付ける事は、一番の戦争の火種になる事。
ココのしようとしてる事は、平和とは真逆の行為だと思います。
だがしかし
作中でもココが言うように「違う価値観の人間が、少しずつ歩み寄って理解し合う世界なんて、何百年経っても訪れやしない」というのも、また真をついています。
だから、一人の武器商人が、強引に、強制的に、世界平和をもたらす。
そのために70万人の犠牲が出ます。
ハイ悪党ですよ私、それがなにか?
と言われれば、それも一理はあるのかと思えてしまいます。
ヨナが最後、ココのところに戻ったのはそういう事でしょう。
しかし僕は
戦争が無くならず、世界が滅亡するとしても
一人の勝手な価値観で、一人の命を奪う事も間違っていると思います。

作者の言いたいことも、アンチテーゼだと思います。
先程紹介したレームの言葉を思い出してみて下さい。
ココの言う事を素直に聞かないでね
飲み込まれねえぞってスタンスで
自分自身できちんと考えてねと。
そう考えるとますます挑戦的で、希少価値あるすばらしい作品ですね。

画像2