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だからオタクは円盤を買う。
熱を上げていた頃、すごく恋焦がれていた時に見ていたアニメの画はとても綺麗に見えて、これ以上ないように思えた。
例えそれがVHSのテープだろうと、地上波の録画だとしても、その時々に見た画にはとても及ばない。
だから自分はアニメのBlu-ray或いはDVDを買うという行為にはあまり食指が動かなかった。
別にまた見たくなったらレンタルショップに行ってDVDを借りれば済む話だし、あの頃録っていた作品はHDDレコーダーに当時の空気のまま残っている。
それに今日においてはサブスクが主流になっていて、家にいない時でもスマホ一つあれば何でも見れてしまう。
ある種暴論に近いが、別にいつでも見れるのにわざわざ高い金を出して円盤を買う必要性があるのか?と思っていた。
そんな折に筆者は昨年の夏にとある作品に心を奪われてしまった。
確かにあの日見たんだ。弾ける星のキラめきを。胸に刺す衝撃を。
その作品は歳の重なりによって見るもの全てが色が無い……セピアな風景しか見えなくなった筆者の感性に光を差した。
本当に久しぶりにアニメに夢中になった。
全12話を何度も繰り返し見た。夏に公開された劇場版も見るために県外問わず足しげく映画館に通って鑑賞した。
果たしてこんなにもアニメに熱を上げたのはいつ以来だろうかと、劇場版を見るために県外の映画館に向かう道中の高速道路でふと考えたりもした。
時速100キロを超す鉄塊の中で昔を回顧するオタク。オタクは思いつく限り時の回廊を彷徨うと次第に7年前、或いは11年前だと結論付けた。
あの頃は毎週の放送日が待ち遠しかったし、周りの人間にその作品の魅力を語っていた。たぶん、巻き込まれた人間は迷惑だったに違いないけど筆者は楽しかった。いや、恋に盲目だったからかもしれないけど。
話を戻すと、その作品の劇場版もやはりオタクの胸を刺した。
あまりの出来の良さに死にかけていた感性はやはり一度死に、そのキラめきでもって再び生き返った。
故にこの作品を永遠に手の内に留めておきたいと思うのは必然だった。
サブスクのようないつ配信が終わってしまうか分からない不確かな物よりも確かな物を……。
そして理解した。だからオタクは円盤を買うのだと。
その作品が好きだから、その思い出を鮮明なまま残しておきたいからオタクは円盤を買うのだ。それをこの歳になってようやく筆者は気づいた。
恋は盲目という言葉は言いえて妙で、筆者は貯金の事など忘れてTVシリーズ全巻、総集編劇場版、そして完全新作劇場版のBlu-rayを全て新品で揃えた。
重厚なカバーで収められたそれは間違いなく、その時好きだった恋或いは熱を封じ込めた思い出だった。こうしてノーパソをカタカタしてるときにでも、棚に飾られたソレを見るだけでその時の感情が思い起こされる。
それ以来、筆者はかつて好きだったアニメの円盤を収集する日々が続いた。
確かにあの頃、とても恋焦がれていた時に見えていた画もすごく綺麗だけど、その思い出を鮮明なまま映してくれる円盤も決してそれには劣らないのだ。
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