見出し画像

ROUND1のカラオケルームでアニメを見たら意外と良かった話

仕事中にTwitterで現実逃避をしていたら、ROUND1でBlu-ray、DVDを持ち込んでカラオケルームで鑑賞が出来るという話が流れてきた。

映画館ほどでは無いが、カラオケの音響装置と100インチのプロジェクターによる映像が楽しめるサービスが手軽に享受できる話に私は興味を持った。

ここ数カ月の間、私は好きな作品のBlu-rayを買い集めてはその都度鑑賞しているのだが、やはり家賃3万弱のボロアパートの防音性と貧相なオーディオユニットでは限界があると悟るには時間はさほどかからなかった。
少しでも音を上げれば隣の部屋から壁ドンを食らいそうだし、そういうことをしていたら恐らく自分に良い印象を持っていない大家に今度こそ追放されそうなので節度な音量を守って鑑賞しているが……やはり好きな作品は良い音、大音量で味わいたい。
その作品が「劇場用アニメ」だったなら猶更だ。
劇場版と銘打たれているように映画館での鑑賞を前提に作られた作品なのだから、こんな四畳半ほどのスペースではそれに見合うわけがない。

実際に利用してみた。

事前に予約が必要だったのでROUND1の公式ページから手続きを行った。
希望日、時間帯、人数を入れ、あとは連絡先を記入するだけで終わり。煩雑な会員登録も無かったので実にスムーズだった。
後は当日に端末で手続きを行うだけで終わりだ。
料金体系としては利用料が2000円。それにBlu-ray/DVD使用料として300円。それに300円以上の料理のワンオーダー制となっているので2600円程。
朝早い時間に行けば朝割で900円程で、それに使用料とワンオーダー制が発生して1500円程だった。

わかります。

劇場版「少女☆歌劇レヴュースタァライト」

当然ながら選択した作品は本作になった。
上映が終了して久しく、既にBlu-rayが発売されているのにも関わらず、その熱は留まることは無く、僅かながらではあるが未だに上映している映画館がある程の作品である。

その理由はいくつか考えられるが、その一つとして挙げられるのが本作が映画館という場所での鑑賞を前提とした作りになっている事が挙げられる。
TVシリーズでは表現が出来なかった音響演出を可能とし、大型のスクリーンに投影された画は、その音響と相乗効果を生み出して見る者を圧倒させる。

実際に、発売されたBlu-rayを手持ちの再生機器で鑑賞しても映画館で見たあの感動には及ばず、それに物足りなさを感じていたのは確かだった。

登場人物たちの息遣い、交わる剣戟、歌声……それらはあの条件下において真に発揮するのである。
こんな貧困アパートにおいてテレビのリモコンでいたずらに音量を上げてもあのキラめきには届かないのだ。

インプレッション

劇場版「スタァライト」は開幕直後に無音の状態からトマトが破裂する。
その瞬間にこの作品がTVアニメではなく、劇場用アニメーションであることに気づく。
上映直後にその演出を行うことで観客の心は否応無しに作品に釘付けになってしまうのだ。
しかし、それは「トマトが破裂」する音が途方もない音量だから成立するのであり、そうでなければその効果は薄まってしまう。

話は変わるが、友人でも恋人でも家族でも何者でも構わないが、誰かとカラオケに行ったという経験は誰しもがあるだろう。
他愛のないシチュエーションであるが、その時々でその誰かが歌う姿は妙に記憶に残っていることはないだろうか?

私は高校生の時に歌の上手い友人がいた。
その友人とは度々カラオケに行ったが、そのたびに私は彼の歌声に感心した。
恐らくカラオケという場所でなく、教室でも本屋の前でも彼が歌えば拍手を送ったと思うが、その場合だと彼の歌声に対して抱く感動は薄まってしまっただろう。
歌声を増幅させるマイクと、部屋いっぱいにサウンドを響かせることが出来るスピーカーがあったから、彼の歌声は一つの「音楽」として成立し、だから感銘を受けたのだ。

要は誰かの心を掴む為には音が大事であり、それには相応の音響機器が必要不可欠だと考えている。

そしてカラオケルームでトマトが破裂した時、劇場で最初に鑑賞したときに抱いた感動が胸に蘇った。
トマトが破裂して粉々になり地面に落ちる音、そして迫るオーケストラの音楽。
そこは映画館という本来の場所ではないが、それに近い環境だと瞬時に理解できた。
100インチのプロジェクターと2基のスピーカーでは映画館の設備には到底敵わないが、カラオケルームという場所を考えればそれだけで事足りる。
あのトマトが破裂した瞬間に、私の感覚ではこの部屋は及第点に達していると理解したのだ。

カラオケルームという場所が良かった。


カラオケというと、デンモクが置かれているテーブルの上に冷凍食品丸出しの料理が躍るメニュー表があって、コップを持って部屋に出ればコーラやコーヒーといった多種多彩なドリンクバーが待ち受けている。

その慣れ親しんだ緩さは究極的に言うとプライベートの拡張である。

そもそもどういった仕組みでBlu-rayを再生するのかというと、単純な話で部屋に備え付けられたプレイヤーにディスクを入れて再生するだけである。
要は普通の家庭にある機器と同じ要領でやればいいだけの話なのだ。
だから部屋に案内された際にはプレイヤーのリモコンを渡してくれる。

好きな場面から再生しても良し。
お気に入りのカットで一時停止して眺めるのも良し。
何度も同じシーンを繰り返し再生しても良し。

それにここはカラオケという場所だ。
コーラを飲み干したら次は口直しに烏龍茶を飲んでもいいし、トイレに立ちたくなったらいつでも部屋から出ていい。小腹が空いたら料理を頼んでもいい。
映画館のような一度上映が始まったら最後まで止まることなく流れ続ける場所と違って、ここは好きな作品を自分の思うがままに楽しむことが許されている場所なのだ。
それにカラオケルームという場所だ。気の合う人間が集まって感想を語り合いながら作品を鑑賞することができる。
映画館に迫る程の再生環境を持つ人間がいればソイツの家に集まって楽しめることができるが、そういう人間は少数派だと思われるので、こういう誰もが慣れ親しんだ場所に集まって仲間内で共通して好きな作品をあの環境下で語り合えるという事は実に素晴らしい事だろう。
カラオケという絶妙な緩さを持った場所でこんなサービスを考え付いた人間は天才だと思った。

プロジェクターは二基備えられており、どこの席に座っても映像が見れる仕組みになっている。一人で利用してもいいが、このプランはグループでの利用がその本質だろう。

MAHIRU

ちなみに私が利用したROUND1では通路側から片方に投射された画面が丸見えであり、ちょっと恥ずかしかった。

しかし、ここはカラオケなのだ。

当然ながらここはカラオケであり、映画館ではない。後者の場合は席に座る人間全員が作品を見るために集まるが前者はそうではない。
むしろ一部屋貸し切って大音量でアニメを見る人間の方がはるかに異質である。
だから、近くのボックスからクサいラブソングや歓声が飛んで来ようと、それを受け入れなくてはならない。
カラオケに行ったことがある人間ならわかると思うが実はそこまであの部屋は防音性に優れていない。仲間内での曲の循環が止まり、デンモクで曲を探している間に隣の部屋から音程が外れた流行歌が聞こえてきたということは誰しもが経験することではないだろうか?

登場人物たちが語り合う静かな場面ではそれが結構顕著で、気になる人は気になるかもしれない。

所感

「劇場版少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録」

結論として貧相なオーディオ機器しか持たない私からすると非常に満足行く結果となった。
アパートでは到底再生出来ない大音量で、なおかつ映画館に迫る環境で作品を楽しむことが出来るというのは非常に稀有な経験だった。
ゆえに二日連続でBlu-rayBOXを持ってROUND1に通う事になったのは必然だったし、不思議なことではなかった。

ちなみに二回目は「劇場版少女革命ウテナ アドゥレセンス黙示録」を持ち込んだ。今後も気に入っている作品をこうして持ち込んで楽しむ日々は続くだろう。
たかだかカラオケルームで好きな作品のBlu-rayを再生しているだけだが、映画館で作品を見たときのあの感覚に近いものを得られると思えば2000円は安いものだと思った。










この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?