Clair de lune(草稿)
月は今晩も闇の中で
ひときわ哀しい眩しさに輝いている。
闇の色は
宇宙の漆黒、無の空間の証。
光の色は
太陽の光線、生の空間の証。
空気、水、命で満たされた地球は
月ほど輝くことはない。
月ほど眩く光線を反射することはない。
月の輝きは
無であるゆえの眩さ。
だから
ひときわ哀しい。
月はこちらに訴えかける。
「美しく神秘的に感じるものには
実のところあまり価値などないのだ」と。
「あなた自身を見つめ直してみなさい。
あなたの立っている大地、
あなたが呼吸している空、
あなたと生きているその星の全てが
この宇宙のなかで何よりかけがえのない美しさでは?」と。
そう。
あまりに当たり前になり過ぎていて
わたしたちは忘れてはならないことを
忘れかけていたのだ。
この星から一歩外に出れば
もう二度と手にすることはできないものたちを。
月の光、哀しき輝き。
夜の闇、際立たせし。
我が存在、
いづれにも在らず。
この奇跡の星にこそ在り。
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