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三顧の礼と、にゃるらは中国へ

 上海へ行く。上海上海上海上海!!
 Weplayという中国最大級のインディーゲームのイベントで、嬉しいことにニディガは最も大きなブースのスペースと登壇やサイン会を用意して頂いている。今は世界各地にバラけているのですが、当初は日本以上に火がついた中国のニディガへの熱狂ぶりは今もものすごく、サイン会は少なくとも1000人以上のファンに囲まれるらしい。前回のこの役はZUNさんであった。

 ということを踏まえ、主催側や今後もインディーゲームを盛り上げていきたいプロデューサーは、何としても僕を中国へ連れて行きたいのだ。世界中のファンに触れること、海外のオタクの熱量を体験することはたいへん意義があり、今後もワールドワイドに作品を発信する(ことになった。世の中何が起こるかわからないものだ)僕にとって、そのスケールを知るにも良い機会であるとのこと。それはとても楽しみだし、嬉しいことですね。サインいっぱい書くよ。中国用の超てんちゃんグッズも用意してきたぜ。
 ……の筈だったのですが、あらゆる点で僕が精神的に不調になり、今の今まで不参加の予定だったのです。原因は多々あるのですが、主に新作の準備で毎週の打ち合わせのたび死に物狂いでシナリオを提出しており、その工程があまりに重く、身体的にも精神的にも死にそうになっている。けど、楽しい! 一人でカタカタとキーボードを叩いているだけなのに、やっぱり何かを製作をしていると楽しい。苦しければ苦しいほど楽しい。そして現状書き上がったシナリオは、たくさんの人たちに褒めてもらえているので、以前も書きかましたが数年後に最高の形でお出しする予定です。絶対だいじょうぶだよ。
 製作後の打ち合わせ三昧よりも、どんなに命を削ろうとも手を動かしているのは楽しい。楽しいだけに、それだけに集中したい。けれどニディガの性質上、監修やテキストは全て僕が一括している。僕はどうしても文章を他人に触らせたくないらしい。自分でもびっくりしたね。なので新しい企画もそこは全部僕一人。本来、数人で分担する量なのに。これでなぜ僕が毎日毎日辛そうにしているかわかってもらえたでしょうか。誤解なきよう書いておくと、苦しんだ分、良いものになっていく手応えがあるので楽しいでもあるよ。僕はそれを望んでいる。
 話を戻します。なので、今はシナリオのことだけ考えたいし、元より(嬉しいことに)超てんちゃんの人気は留まることを知らず、いろんな企画はたくさん舞い込んでくる。それはたしかに僕が中核となるしかないので、プロデューサーも「非常に申し訳ないが助けてやれる案がない」と言っている。これも理解できる。本当にどうしようもない。クオリティを下げることは避けたい以上、誰かは犠牲になる。
 とはいえ、そのせいで心はズタズタ。なので、抗議の意味も兼ねて中国のイベントで客寄せパンダになることを断った。もちろん僕だって世界の熱気を浴びてみたかったが、それが成功することで現状の不満や過労がなあなあになる不安も大きく、何より先月末から恐ろしく寝不足(シナリオのせいでね)。ここで簡単に向こうの仕事を了承すると僕は不幸になると(寝不足のせいで)思い込み、自暴自棄も相まって断固拒否したのです。
 そこでプロデューサーは、破格の改善案を提案してくれたし、イベント側も朝起きれない僕のためにサイン会や登壇の時間をズラしてもくれた。ここまで期待され、優遇される状況に、とても心打たれた。本当にありがとうございます。
 ……が、それでも断った。
 やっぱり人が多いところ怖いし……とウジウジしてしまい、「どうしてもお前に世界を体験してほしい!」というプロデューサーのメッセージを泣く泣く見て見ぬふりして眠ったのだ。申し訳ない。でも本当に精神的に弱っているのです。

 結果。プロデューサーが家に来た。しかも3回来た。1.2回目は居留守を使ったものの、3度目になって罪悪感に耐えきれず扉を開け、そのままプロデューサー宅〜空港へ連行。荷物も全然持ってない。財布すらない。ここまでしてもらったら腹を括るし、行くなら行くで全力で楽しもう。サイン会やトークショー含めてね。強引すぎると思いつつ、僕のような死ぬほど面倒なバカはこうするしかなかっただろう。向こうもまさか本気で逃げ出すとは思ってなかったらしい。本気だった。すみません、ありがとうございます……。
 三顧の礼。孔明だって3回目も礼を尽くされたことで主を認めたのだ。僕も男だ。今回は、この3度の礼に応え、見事上海でのイベントを成功させるよう尽力をつくす所存であります。

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