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vs生まれて初めての花粉症

 最近の調子の悪さは異常だ。何かがおかしい。この倦怠感は何か不眠以上の何かが起きている……頭痛や怠さが今までの比じゃない。
 で。自分の身に起きた異変を冷静に考えてみたところ……。
 花粉症だ。僕はいま、生まれて初めて花粉症にかかっている。しかも鼻の粘膜が無い状態なのでダメージ数倍で。
 去年までは鼻と口が繋がっておらず鼻呼吸できないわけだから、当然花粉も通らない。なので、手術を行なった今まで一切花粉の影響を受けてこなかったのです。それが今はどうだ。手術によって鼻呼吸が可能となったかわりにスギの花粉は鼻腔を圧迫し、さらには大事な防御壁である粘膜を手術で使い切ってしまったのでノーガードで荒らしてくる。ただでさえ初体験なのに威力が数倍なのである。そりゃ体調も精神も著しく悪化する。
 30年生きてきて初めて花粉症に困らさらている。こう書くと30年この苦しみを知らずに済んだことは幸運に思える。まあどう考えても鼻呼吸できない方が辛いのでしょうが。
 逆に言えば、鼻と口がそれなりに繋がっている証拠でもある。まだそこまで匂いを認識できないうえに、今は上記の理由で詰まっているので匂いも輪をかけて分からない。
 といった理由でしばらくはどうしても体調不良なうえで、できる限り外出をしたくない……花粉と関係なく、それなりに連動しているのかもしれませんが。最近は不眠で荒れている。
 それはともかく、数日前。ホワイトデーの際、鼻がどれだけ効くかのテストでクラフトビールのお店に入ったんです。ビールの違いがわかったら感動するかなと。一人で。
 店内のバーカウンターに座ると、左に男性一人。右は空席があってその先に女性二人組がいる。つまり男女2:2。とは言え、別に客同士の絡みがある感じてもないので、静かに黒ビールの香りを堪能しようとしていた矢先……なんと左側に居た男が「ホワイトデーだから」と女性客二人にビールを一杯ずつ奢り始めた!
 まさか「あちらのお客様へ」をリアルで聴くことになるとは。喜んでお礼を述べる女性たち。そのまま会話が広がっていく。ナンパ成功である。僕を挟んで。図にするとこうなる。


 せっかくお酒を飲んで楽しくなっているのだから客同士でワイワイするのも良いことだと思いますが、こうも綺麗に挟まれてしまうと気まずい。「ホワイトデーだから」という口実がついたせいで僕には何も無い。奢ってもらいたいわけではないが、単純に自分が無関係なので自然と会話に混ざれない。ここで陽気な人間なら「兄さん、僕にも奢ってくださいよ〜」と笑いを取りに行くのだろうが、なにぶん花粉症(この頃は自覚なし)で頭が重いし、別に通常であろうと話に参加するタイプじゃないが。
 味と香りに拘りのあるお店なので、お客さん三人は「どのビールが最も美味しいか」を店員交えて真剣に語り合っている。僕を挟んで。こんなに気まずいことあるか。しかも匂いがわからないので結局ビールの違いもあまり理解していない。もし話題を振られたらしどろもどろしてしまうこと必至。緊張の時間が流れる。
 するとどうだ。新しい客が来店してくる。妙齢のお爺ちゃん。お爺ちゃんは席に着かずに店員へコンタクトを取る。そして「この店にソムリエはいる?」と聞き出すのだ。漫画みたいな展開の連続にさらにびっくり。ソムリエ!? しかも店員は「わたしソムリエです」と返す。そうだったのか……。ソムリエもホワイトデー男もキャラが強すぎて怖くなったので、スッと退散する。不思議な時であった。
 あまりにあわあわしていたものの、言われてみたら黒ビールとビールの違いは分からなくもない……気もする。香りの違いなぞどうでも良くなるような展開のせいで何も頭に入ってこなかった。あと、お客さんたちは「キレが違うね」と話していたが、キレってなんだろう。よくビールにはコクやキレなる単語が登場するが、それも全く分からない。これは嗅覚とか関係ないのだろうか。ソムリエに訊けばよかった。
 話は逸れに逸れましたが、なんにせよ現状生まれて初めての花粉症と格闘中です。めちゃくちゃ怠い。何もしたくないよー。

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