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エッセイ:保険証を手に入れたものの、いざ「嗅覚」が手に入ると思うとそれはそれで怖いという話

 皆さんからの応援のおかげもあり(この答えはウソ。全部自分の頑張り)、どうにか保険証を受取ることに成功しました。
 決定打となったのは、この意味もなくふらっと歯医者に入り、10割負担で検査する作戦。

 ただ歯をガチャガチャされるだけで1万以上飛んだものの、月内に保険証を持ってくることができれば7割返金という約束をして頂けた。保険証を取らなければ自分は大きく損をする。
 更には、月の初めに倒れたという話もnoteに書いたが、また倒れる危険性を考えると精神科にも行ってみたかった。ちなみに精神科には既に通い、そこでも色々と面白いことがあったのですが、そこは後で単品の記事にしようかと。

 さて、何度かnoteなりTwitterなりで書いてきたのですが、僕は生まれつき鼻呼吸ができず、それに伴い嗅覚が完全に機能せず、味覚も人より薄い(これに関しては比べられるものでないので実はわかっていないのですが)状態です。
 ものすごく珍しい病気なため簡単に説明をすると、鼻腔がものすごく狭いため空気が通りません。なので、僕は年中口呼吸ですし、必然的に鼻声です。幼少期は「鼻声」が認識できなかったため、なぜか自分の声だけ異様に聞き取りにくそうにされることがコンプレックスだったり。今でもそれが強く、気心の知れていない相手とサシで話す際に、上手く言葉を伝えられるか緊張したりもあります。

 他人と違って五感の一つが足りていないことを理解した時の、「なんで僕だけ?」という気持ちは一生忘れられません。ウソです。気づいたときに何を考えていたのかなんて全く覚えていません。恐らくウルトラマンティガの続きとかの方が大事だったと考えられる。

 デメリットはまだまだあり、一番はやはり匂いが認識できないことで、たとえば「いい匂いがするね」「なんだか臭いね」なんて話を振られても、曖昧に頷いたりスルーしかできない。別に相手も深く訊いてくるわけでないので、どうにか適当にやり過ごせているのですが、「なんだか臭いね」と言われると、匂いの発生源は自分ではないかと疑心暗鬼にならざるを得ません。今は必要以上に消臭や清潔にしているつもりなので、恐らく大丈夫だと信じていますが、確かめようはない。
 他にも料理に対しての感想もだせず、なぜなら僕は舌だけで料理を判断するしかないため、匂いなども含めて料理を味わえる他人の感想とズレたものになることを学びました。食欲を煽るためのスパイスや臭みを消すための工夫などは、僕には全くわかりません。
 当然ながら、多くの人は食事を楽しみにしているため、外食や自炊をすると感想を求めます。お世辞を言うのも(良心的な意味合いでなく、ズレた感想を言う危険性も含めて)気が引けるので、いつしか事情をわかっている相手以外との食事は避けるようになりました。
 特に、高い料理を奢ってもらえる機会が苦手です。僕にはコンビニのお寿司と高級料亭のお寿司の違いが全くわからず、どことなく損した気持ちになるのです。それが自腹だと更につらい! かと言って、こんなイレギュラー一人に気を使ってもらうのが一番怖く、上限があるとは言え、美味しいものは美味しいため、気合い入れて楽しむしかありません。なので、「味」や「質」の勝負でなく、敵の料理や審査員にクスリを仕込むような戦い方をする「鉄鍋のジャン!」が唯一好きなグルメ漫画です。


 その点、人生において標準以上の体重になったことはありませんし、食費も大してかさまないので得でもあるので、ものは考えようですね。トリップ中に五感が研ぎ澄まされた時だけは、嗅覚らしきものも僅かに感じ、食事を楽しく感じられたり。呼吸器が弱い分、お母さんの「タバコは吸わないで」という注意を25年守っております。えらいでしょ。他の吸っちゃいけないアレやコレやは吸っちゃいましたが……。

 後は、やはり呼吸に制限がある分、運動に対してだいぶ不利があるため、なぜハンデを背負ってやらなければいけないのかと、小学生時代では既に体育は殆どサボってきました。これはむしろ早めに読書やゲームなどの内向的な趣味に集中するキッカケとなったため、不満に思ったことはないです。

 ロマンティックな部分で言えば、口を塞がれたら終わりであるため、長時間のキスで窒息します。3分くらいキスされるとみるみる顔が青ざめ意識が遠くなるでしょう。キスで死ぬのはカッコいいので嬉しいですが。
 逆に、匂いを気にしない分、クンニリングスに対して抵抗がないため、前戯に有利でもあります。一長一短。

 匂いを気にしない応用で、一般的に小汚い人たちとも仲良くできる。なぜなら視覚以外に嫌悪感はないし、僕は見た目では人を判断しないので。この特性のおかげで妙な人間と変に仲良くなる機会も多かった。ねずみ男と鬼太郎の関係で通じるだろうか?

 ここまでデメリットを並べた上で保険証取ったんだから早く治せや! という話でしかないのですが、途中で無くなったものならともかく、自分にとって嗅覚は新機能であるため、これまでの人生のバランスが狂いそうで怖いのです。

 この歳までグルメを知らなかったのに、今更味を気にして食事に興味を持ったりとか、もう運動に対してハンデがないので単純に運動能力が拙いオタクと化すこと、特に保険証さえあって普通の人生を送っていれば早めに治せた事実と向き合うのが怖い。

 幼少期はこの病気のため、よく入院していましたが、子供の頃のまだ完成していない骨を無理やり広げると、それはそれで別の問題がでてきてしまうため、大人になるまで手術ができないと宣告され、たしかに18歳まではどうしようもありませんでした。
 しかし、18~25までの間に手術しなかったのは、お金がなかったり保険証を取りにいけないようなADHDしぐさ(まだ結果がでていないため発達障害かは不確定ですが)という、自分の怠慢でしかない。

 鼻から息ができることで、とんでもなく快適な生活になるとしたら、この無意味に苦しんだ7年はなんだったのかと。これで食事や運動に興味がでて、自分の内向的な趣味への集中が切れてしまったらどうしようと。そういうしょうもないことを考えてしまうのです。

 まぁでも種死OPも「変われる力恐れない」と言ってるし、ウルトラマンゼロの歌詞だって「運命や宿命に向かい合う時が来た」から始まるわけだし……。保険証とっちゃったからには、もう、ね……。

 後はお金が足りるとかと、根本的に僕は病院などに電話することも、そして予定通りにその場所へ向かうことも超がつくほど苦手であることだけが懸念です……。

 でも、やるしかない。このまま「真・中華一番!」のアニメを楽しめないのは勿体ない。今期はソーマも放送中なのに。
 これで僕が手術後に、食事最高……! 運動最高……! みたいになったら、貴方が殺してください。よろしくお願い致します。

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