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一口エッセイ:筒井康隆の性格の悪さと「家族八景」

 自分の作ったゲームが「製作者は性格が悪い」と言われております。良くも悪くもインターネットのありのままを書いたつもりなので、そう言われるのは心外……ではなく、その反応は楽しんでいる証拠であるので、大変嬉しく感じております。
 それはともかく、僕が「この作家、心の底から性格が悪くて凄すぎる!」と感じた作品として、筒井康隆大先生の「家族八景」があります。この作品、大好きすぎて、滅多に観ないドラマも視聴したよ!

 あらすじ。精神感応能力によって他人の心が読める少女・七瀬が、住み込みのお手伝いとして色んな家庭を回るものの、どんな家族相手でも他人の闇を見てしまうことによって、どんどん精神が荒んでいく短編集。もう、あらすじだけで嫌なことのオンパレードなのが伝わるぜ。
 男性が現れたら、若い七瀬に必ず情欲を抱くし、女性が現れたら、若い七瀬を無意識に見下すか利用しようと画策する。この作品の特筆すべき点は、彼ら彼女らは特別人格が悪い者として描かれている訳ではないこと。あくまでどこにでも居る人間たちであって、誰だって内心ではこんなもんだと筒井先生は率直に書いているだけに思える。心の中なら、他人を穢すも見下すも自由なのだ。ただ、それがテレパス能力のある七瀬には伝わってしまうだけで。
 みんな常識があるから行動と言葉に移さないだけで、人間の建前だけで言うなら、誰もが醜いことを丁寧に書き連ね続けている。思考が読める時点で、七瀬でなくとも誰だって壊れる。この世界が、大人たちの「理性」によって成立していることがわかる、非常に性格の悪い名著です。大好き。


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