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ドクタースランプ 『Hello, I love you』

 鳥山明先生の訃報が流れてきました。自室にずっとデスピサロのぬいぐるみを置いているので、これからデスピの顔(2つある)を見るたび切なくなるなとしゅんとなる。
 YouTubeを開くと、いつも僕が観ているレトロなCM集をひたすらアップしている方も追悼動画をあげておりました。

 『鳥山明さんを偲んで』というタイトルが、つけられたこの動画では、CM蒐集家であるチャンネル主でしか保存していないであろうアラレちゃんの当時モノCMがまとめられている。彼らは、ひたすら現存するビデオテープを集め、CMを抜き出してYouTubeにアップする。それを僕ら一部の好き者が享受する。レトロCMをアップすることで故人を偲ぶ、マニアならではの追悼。
 こういう時こそ、何が好きだったかの話を想い出混じりに日記にでも書くのがオタクの役割かもしれない。なので、今回は平成版アラレちゃんのオープニング曲が好きという話をしましょう。


 平成生まれなので、当然リアルタイムで観ていたのは90年代後半に放送された『ドクタースランプ』の方だ。それも殆ど物心ついてない頃であったが、3.4歳ながら夕方にアニメが放送されている喜びは記憶している。そのあとビデオで観ていたので、自分にとってのアラレちゃんは茶髪のオシャレさん。悟空たちが決まったユニフォームが殆どな分、鳥山明のポップなファッション性はアラレちゃんで発揮される。まず、この大きなメガネに「かわいい」イメージを付与してくれたのも他ならぬ鳥山先生。
 ドラゴンボールGTの放送も終了し、世はついに世紀末。長い戦いを経て悟空が帰ったと思ったら、今度はパワーアップしたアラレちゃんがやってきた!

 ドクタースランプのOPは3種。僕が特に気に入っているのは二曲目『Hello,I love you』なのですが、あまりに衝撃も顔面も大きすぎた初めのOP『顔でかーい』の話は外せない。
 アラレちゃんらしさで考えるなら、『顔でかーい』は正しくアラレちゃんらしい。可愛らしい歌声でひたすら「顔でかい」を連呼する無邪気さは、アラレの底抜けな明るさ幼さ、生みの親である天才博士・則巻千兵衛への信頼の裏返し。加えてイヤでもテンションが上がるイントロのガチャガチャゴチャゴチャとしたサウンドは世界観の表現に一役買っている。
 が、このオープニングは苦情がきてしまい、途中で変更となってしまう。例えペンギン村の住民たちからでも、顔面を揶揄させ続けられるのは気分が良くない視聴者が居て仕方ない。「宇宙人にはモテるみたい」「顔面ブロックまじすごーい」などのフレーズだけ取り出すと、たしかにクラスの人気者から弄られ続けて泣き寝入りしている気持ちにはなる。

 とはいえ、この曲も2クール分使用されたので、別に「急に変わった」感もない。代わりにOPに抜擢された『Hello,I love you』は、正に90年代後半なデジタルなサウンドによるロボット娘視点でのラブソング。「CPUなら百万メガヘルツであなたのお役に立って見せます」「わたしの体の中を駆ける電子があなたを求めているよ」と、人の役に立つため生まれたロボットと人間の関係性がド直球に描かれる。聴いていると、なんだか大人びたアラレのifを想像して切なくなるほどにストレート。いい……作詞はサンプラザ中野くん。
 小室哲哉から広がった電子的なサウンド、90年代のビビットな未来感の歌詞、ポップでオシャレなアラレちゃんの存在、程よく上手すぎないアイドルボーカル、全てが噛み合い、現代ではほぼ生まれないであろう一曲。ロックマン8のOPのような、テクノロジーへ今以上の希望が感じられた時代ならではの奇跡。ドクタースランプらしい呑気な雰囲気とアンドロイドの恋愛観のミスマッチが逆に響くのです。 
 

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