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一口エッセイ:ICL手術によるサイボーグ化

 目の手術をしました。ICLという眼球の中に直接コンタクトレンズを埋め込み、半永久的に視力の良い状態を保つ矯正手術です。
 冷たい手術室へと運ばれ、椅子に座らされた後、器具によって片目を開いた状態で固定される。椅子に抑押さえつけられながら無理やり目を開かされる状況に、『時計じかけのオレンジ』に使われた、クリップで目を見開かせられて残虐な映像を観せ続けられる拷問、『ルドヴィコ療法』を連想したり。
 まず、大量の麻酔液が注がれ、視界が黄色に覆われる。大量の水で前が見えなくなると、自分が黄色の海に溺れているような錯覚が起きる。渋川剛気がジャックハンマーの涙穴を突いた技みたいやね。
 数十秒後、ついにメスで瞳を切り開く。自分の眼球に傷をつけられる初めての体験。視界は黄色いままで、何かを行われていることだけが分かり、視界の端にうっすら切先が見える。開いた傷からコンタクトレンズを挿入する間、視界が†完全な闇†となり、経験したことのない「黒」の中心に、青白い光の輪が浮かび上がります。まるで天使の輪のようで、神秘的な映像。この光の輝きを追っているうちに、レンズが挿入されて無事、終了。もう片方の眼も同様の処置を繰り返す。合計30分くらい。


 病室へ戻ると次第に視力が回復していき、自身が眼球にレンズを埋め込んだ改造人間であることを実感します。技術の進歩とともに、こうしてどんどん身体を弄る手術が増えていくのでしょう。義体化が夢では無くなった未来、自分が人間である存在の証明は、脳内で囁くゴーストの直感だけになるのだ


 毎日の日記をまとめた同人誌を販売中。明るいところで、目を見開いて読んでね。

 若い頃の長文エッセイをまとめた商業エッセイ集もよろしくお願いします。この頃は、自分がサイボーグになるなんて想像もしていなかった。

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