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一口エッセイ:新条アカネ

 先日、『グリッドマン ユニバース』を観に行きました。正しく特撮ヒーローの劇場版だなって大満足な暴れっぷりが爽快です。巨大な存在同士の市街地でのぶつかり合いなのに、オモチャ感全開のキンキンしたSEが特に良い。この(いい意味での)オモチャっぽさは、グリッドマンシリーズのリアリティラインと世界観だからこそ成せる技。
 アニメ版グリッドマン自体には主人公の扱いにモヤっとした部分があったのですが、劇場版で見事にカバーされて嬉しかったです。ダイナゼノンは、やっぱり不登校の不良少女の成長を安易に「学校に通い直すこと」にしなかったことが好きだったので、その「日常からちょっとだけはみ出し少年少女の冒険」の締めとして、最後の最後に気の抜けた食事シーンを観せたのは完璧だと感じます。総じて良いもの観たなって気持ち。
 さて、まともに作品の感想を書いたのでギアを上げますね。僕は、新条アカネ……アカネちゃんのことが大好きです。


 アカネちゃんは、この作品の中でも特にファンタジーな存在。いや他のヒロインたちもリアルではないのですが、そもそも「オタクに都合の良すぎるキャラクター」としてデザインされているのがアカネちゃんであり、映画本編でもご丁寧に「クラスの誰からも好かれる美少女なのに、怪獣に誰より詳しいというありえない設定」扱いされていたことが動かない証拠。そう、新条アカネの存在はファンタジーなのだ。


 これは昔の僕の部屋。アカネちゃんを囲うように怪獣ソフビを置くことで、自分の何かが救われた気になっていた。
 彼女の観念性は実にシンプルで、「美少女なのに怪獣が大好きな女子高生」。もちろんちょっと怪獣が好き程度でなく、彼女は自室の9割をソフビが詰まったショーケースで埋めているし、つねに怪獣を第一に考えている。それでいてオタクゆえに教室で浮いたりもしないし、誰が見ても美人で、オマケにオタクが感情移入できる性格の悪さも備えている。この性格の悪さも肝で「ネットのオタクっぽい」……というかアカネちゃんは匿名掲示板を見ている描写があるので、実際にそういった機微にも理解があり、安心感と親近感を覚えてしまう。ように設計されている。
 都合が良すぎる!

 円谷公認の作品かつアニメだから許される、特撮オタクの理想のみが詰まったファム・ファタール。作中でもこのアカネちゃんはアバターなんですけどね。劇場版で実写パートが増えたせいで、むしろさらに彼女への届かない想いを拗らせたファンも少なくないはず……。とにかく危険な存在だ、アカネくん。
 したいだろ。美少女とウルトラ怪獣の話。好きな超獣について夜通し語り合いたいだろ。僕はカメレキングとブラックピジョン。もちろんおっさん達ともするよ。一緒に中野ブロードウェイ回りながら、ウルトラマンやライダーのオモチャ見てあーだこーだ言い合う経験は何度もした。それはそれでかけがえない時間ですよ。でも! 美少女二次元キャラクター(同じクラス)とドキドキしながら話したい欲求は全く別です。弱いんだよ、オタクは。女の子が自分の好きなジャンルで喜んでいる姿に。
 そんな「都合の良さ」で構築されたオタクの求めるオタク美少女の概念なんです。そのうえミステリアスに異性を翻弄してくるんだから、もう苛立ちますよね。逆に。「コイツ……!雨宮監督……!延いては円谷とトリガーめ……!」って血が滲むまで歯を食いしばってますからね。視聴中。許せねぇよ、ここまで人間の心を弄んでどうしたいんだ。悔しいよ。
 悔しいけど、いざアカネちゃんを前にすると、「あー好き……(キモオタ)」になる。悔しいよ、本当に悔しい。めちゃくちゃ悔しいし怒りすら感じるけれど、傍に居て一緒にウルトラマン観ながら笑っていて欲しい。マジの恋だよ。とても、とても悔しいよ僕は。

 

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