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一口エッセイ:「魔境」と薬物漬けの神

 時に、人は幻覚剤やオーバードーズなどで、神秘的な体験をします。上位存在やアカシックレコードを感じ、「真理」に触れるわけですね。脳内麻薬が過剰に分泌された状態で霊的な感覚を得るのは、さぞかし上質な体験であるでしょう。しかし、果たしてそう簡単に神へ近づけるものでしょうか?
 普段から熱心に神を信じる純粋な信徒ならともかく、試しに幻覚へトライしてみただけの一般人のもとへ訪れるほど、神は安い存在では無いはずです。それは脳内物質が生み出した薬物漬けの偽物の神だ。それを真理だと誤認してしまうから、人は道を誤るのかもしれません。
 よくラリった人間が、「神が仏が」と言いだすので、僕も気になって調べてみたんです。このまやかしには理屈があるはずだと。そこで知った、最も近い概念が「魔境」。
 この現象に対しては、「瞑想により仏陀や如来が現れたときは槍で突き刺せ」「仏見たなら仏を殺せ」という教えがある。瞑想中に神格を持つものと一体化してエゴが肥大化し「魔境に入る」のを防ぐためですね。つまり、ヤク中たちがトリップ中に「神」を語った場合、それは仏教だと魔境に入っている状態な訳です。仏に逢うては仏を斬る、修羅の気持ちが大切です。詳しくは京極夏彦の「鉄鼠の檻」を読んでみてね。
 シャーマンたちが儀式で使用するわけですから、薬物で神に近づくこともあるかもしれない。でも、それは普段の信仰心の賜物。神のフリして近づく悪魔に、惑わされるような人間であってはいけない。
本当の真理は、そんなところで見つからないぞ。


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