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一口エッセイ:「銀河鉄道の夜」と宮沢賢治の葛藤

 幸いにも製作したゲームが好評でして、次々と案件がきて発売前より忙しくなった。嬉しい悲鳴であるので、大丈夫ですが、気を利かせてくれたのか、僕が好みそうなお店で打ち合わせしてもらうことに。

 荘厳な内装にも目を見張りますが、文豪をイメージした飲み物に興味を惹かれ、宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をイメージしたモクテルを注文。水面に散りばめられた夜空の表現と蒼さは、とても美しい。
 さて、「銀河鉄道の夜」が好きな理由を話すと、現在一般的に知られている第四次稿と第三次稿ではオチの読後感が大きく異なり、そこに賢治の作家としての葛藤が読みとれる気がするから。


 第四次稿は知ってのとおり、ジョバンニが川の様子を聞いたことでカムパネルラの死に気づいて終わるわけで、そこから色んな心情を読者が想像し、自分がジョバンニなら今後どう生きるかと考える。
 対して、第三次稿では、「ブルカニロ博士」なる人物が登場し、このブルカニロ博士との会話によってジョバンニの心情が描かれて、「これからは本当の幸せを求める」と明言してしまうのだ。
 今となっては多くを語らない第四の素晴らしさを皆知っているわけですが、第三のオチの方が分かりやすく道徳的かつテーマが示されていて、これはこれで完成されている。しかし、そこから悩みに悩んだ賢治は、ある意味バッドエンドのような読後感を選んだ。そうすることで、分かりやすい道徳から外れた物語に仕上げ、結果的に第三よりも多くの子供たちの心に残る名作になったと思う。
 このオチに対する葛藤こそ、宮沢賢治の作家としての魅力そのものだと僕は感じている。


 毎日のエッセイをまとめた同人誌などをboothにて販売しております。僕の生き様を読んで、何が幸福かを判断してみてください。

 先月、発売した商業エッセイ集もよろしくお願いします。書き下ろしたっぷりで、ネットで読むのとはまた違った読後感が味わえるはず!

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