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一口エッセイ:「でも友達だもんな しょうがないよ」とヤニねこ

 一巻発売記念だそうで『ヤニねこ』が全話無料になっていたから、ぼちぼち読み進めております。

 本当に、本当に汚くてドン引きする描写をぶつけてくるヤンマガ精神もさることながら、回を重ねていくごとに登場キャラクターも増えて、狭いアパートでわいわい楽しく過ごす様は(たとえニコチンと薬物の匂いだらけであろうと)、まるで『めぞん一刻』のドタバタコメディパートを読んでいるような嬉しさがありますね。
 みんな貧乏で、みんなバカで、全員が迷惑だからこそ成り立っているような愉快な日常。マジでヤバいくらい汚らしいけれども、ごくごく僅かながら羨ましくも見えてしまう。良い漫画です。


 そんな『ヤニねこ』でも勢いに笑ったシーンが『トレイン・スポッティング』のパロディ。あまりに自然に名シーンを再現し、そして汚さのシナジーが絶妙に噛み合った素晴らしい流れです。
 この回、よく読んだらサブタイトルの「終煙」もカッコいいな……。
 それはともかく、ヤニねこには途中「ヤクねこ」なる、ガンギマりまくりなキャラクターが登場し、ある意味ただのニコチン中毒で不衛生なヤニねこ以上にヤクい存在なわけですが、大家さんは他のキャラ含めて仲良しなんですよね。この世界で細かいこと気にしたって仕方ない。ある意味では平和で、きらきらした日常漫画とも言える。
 この「友達だからそんなもん」で細かいこと気にしない関係が大好き!


 さて、先ほどのページの元ネタ『トレイン・スポッティング』の話をします。トレイン・スポッティングには、様々なヤク中の若者が登場しますが、その仲間内で最もヤバい人物は、唯一ドラッグだけは一切やらない男・ベグビー。彼はすぐにキレるし、誰にでも喧嘩を売るし、とにかく暴力的で乱暴。悪巧みもどんどん加速して、巻き起こす事件の規模もみるみる膨らませる厄介者。が、劇中のみんなはそれでもベグビーと絡み続ける。その理由は予告編でも登場するこのセリフでしかない。


 「でも友達だもんな しょうがないよ」
 なんて良いセリフなのでしょう。たとえ彼が酒乱で喧嘩っ早くて野蛮なトラブルメーカーであっても、「友達」なんだから一緒に遊び続ける。しょうがないのだ。どうせみんな大した品性なんて持ち合わせてなければ、ベグビーと別ベクトルでクズなのだ。クズ同士だからこその信頼と友情がある。そんなヤンキー文化の核が一文でサクッと表現しているのだから、このセリフはとてもクールだ。痺れるぜ。
 僕が住んでいたシェアハウスでも、なぜか全くお風呂に入らない人間がよく出入りしていた。嗅覚のない僕は気にせず接していたが、住人の中には匂いに関して怒ったり不快に感じるものも当然いた。「頼むからシャワーに入って!」と指摘することはありつつも、それでも基本的にはリビングで一緒にゲームや雑談をする。
 普通、絵に描いたような「お風呂嫌いなオタク」とは距離を置きそうなものですが、出禁にしたり避けたりすることは最後までなかった。まあ外出前くらいは風呂には入った方が良いとは今でも思うけど……。あれも「友達だから」なのでしょうね。
 すべて、そういうことなんだな。僕の周囲も自分含めてろくでもないやつらばかりで、気づけば何かのトラブルの連絡がくるし、時には僕がストレスで暴れたりするけど、それでも互いに今でも仲良くやっている。友達だからしょうがないのだ。みんなおかしい前提の集まりなのだから、細かいことなんてどうでもいいのだろう。

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