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一口エッセイ:VS子供

 打ち合わせが立て込み、であれば最もそれが効率がいいなということでプロデューサーの家へ宿泊させてもらっています。他人の家に泊まること自体がイベントなので楽しいね。


 それはともかく、プロデューサーには娘(2歳)がいるので、プロデューサーが夕食を作ったり、通話している時は僕が面倒を見ることとなった。2歳児と一緒に遊んでやる、新鮮な体験だ。
 保育園でお絵描きにハマっているらしく、ホワイトボードにぐちゃぐちゃなペンを走らせてたので、僕が"格"を見せつけるため、ドラえもんやアンパンマン、ピカチュウにホラーマンなどを描いて差をわからせてやった。そのたび、彼女は「もっと描いて!」とねだってくるので、フン……あまりの力量の差におかしくなったのかと、バイキンマンなども描いてやる。ちなみにヒヨコが好きらしいので、ヒヨコの絵をたくさん描いてやった。そのたび飛び跳ねて興奮していた。なんと単純な生き物なのだ。
 しばらくして、グッズ担当の方たちが訪れ、僕が監修すべきグッズたちを机に広げていたが、プロデューサーの娘は、まだホワイトボードに夢中で、線を引きまくるたびに「見て! ヒヨコの子供を描いたよ!」と監修を妨害してくる。なんと厄介な娘なのだ。しかも、白い板の上にはあまりに縦横無尽に引かれた乱雑な線しかできておらず、「これのどこがヒヨコなの?」と煽ると、「も〜!!!」と怒りだし、またまた線を引き出す。途中で自分でヒヨコを描くことを断念したのか、打ち合わせ中に僕はヒヨコを描き足すことを要請するので、この子のせいで打ち合わせも聞きつつホワイトボードへひたすらヒヨコを描く二足の草鞋となった。全く、大変だぜ。
 彼女を部屋に送る際、エレベーターのボタンを自主的に押してくれたので、「よくできたじゃん」と褒めてみると、なぜかその発言から1分経ってから「やったー!!!」と飛び跳ね始めた。たしかに、褒められた瞬間に喜ばないといけないルールは無い。別に一分後に喜んだって何の問題もない。そこに関しては、完全にこの子が正しい。
 そういうことを考えさせられる1日だった。世界にはたくさんの刺激があるのだから、たまに家に来る謎の男に褒められたところで、それへの反応なんて一分先で全然いいよな。

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