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一口エッセイ:破滅願望

 あまりに精神的に疲れているので自暴自棄寄りになっている。破滅願望とも言い換えられる。もうどうにでもなって諸々と終わってしまえばいい、と思いつつ理性のブレーキは全然効くので、特に暴れることもなく粛々と返信や作業を行った。心の中では捨て身なつもりが、なんだかんだで正気であった。
 破滅願望というものは不思議だ。僕はパチンコやパチスロを打つ際、あまり釘や設定を深く考えずに臨んできた。スロはある程度やめ時やチャンスゾーン、設定判別法は覚えていましたが、そこまで拘っていない。ふらっと寄って空いている台に座る。イベントやカニ歩きはしない。そこまでガチで行うのなら、ギャンブルでなくまともな方法で努力した方が効率的だと感じている。所詮、パチやスロは気晴らしにしたい。
 お金のない状態で数万負けると、だんだんと冷静さを失う。いっそ財布が空になった方が精神的に楽なんじゃないか、開き直って楽しくなるんじゃないかと、訳のわからない思考で全額ベットする。しかし、あの瞬間はやっぱり楽しいのだ。家賃まで呑まれ、取り返しがつかなくなってから力無く笑うあのタイミング自体は、ちょっと勝つよりもテンションが高い。もちろん、めっちゃ勝ったときが一番嬉しいけれど。
 ギャンブルで痛むのは己の財布なのでまだいい。場合によっては人間関係に自暴自棄……破滅願望が適用されることも少なくありません。誘われたイベントなどを急に断り、代わりに孤独に浸る。まあその時は今日と同じく精神的に弱っているので、無理して行った場合に焦って空気を壊してしまう恐怖があり、それを鑑みて早めに不参加を表明する。実際はわりと行きたかったりするのですが、途中で自暴自棄癖が出て、みんながわいわいしている裏で独り自己憐憫の殻に閉じこもる方が総合的に楽だし気持ち良いと判断したら実行してしまう。
 完璧主義も混じっているのかもしれない。
 例えばパチンコやスロで負けている時も、半端に終わることが気持ち悪くて、ならば完璧に負けた方が潔くベストを尽くした気持ちになれるので、最後の千円までサンドへ突っ込む。それと同じで、どうせイベントに参加する・旅行するなら万全に満喫したい。けれども、何個かの懸念があるのであれば、少しのミスでイラつき白けてしまう自分が容易に想像つくので諦めるのだ。
 しかし、物事を完璧に満喫するなんて至難の業だ。人間が多ければ多いほどトラブルは付き物です。なので、今年はほとんど一人で旅行をした。一人の旅行も特別楽しかったわけではありませんが、どこで降りてもいいし、目的地もなく好きに商店街を一周してもいい、どんなタイミングで喫茶店に寄ってもいいわけで、「気楽」ではあった。何が起きても自己責任でしかないため、上にも下にも期待の範疇を越えることはなく、理想が崩れてヤケクソにもならない。怠ければ途中で宿に帰って横になっても良い。独りだから。
 けれども大勢のいるイベントに参加した場合、自分がそうして白けて休む、黙ることすら他人へ迷惑をかける。一度そうして「閉ざす」モードは入った僕がその場で復活するのは大変むずかしい。もうどうにでもなれと不貞腐れて一人で勝手に辛くなり続ける。敢えて苦しむ選択肢をその場でえらんでしまう。若い頃なら許された……まあギリギリ許容された振る舞いであり、今やったらシンプルに信頼を失ってしまう。ならば最初から大勢の話顔を出さなければいい。そうして諸々を断り続けていくうちに、だんだん後悔や自己嫌悪が重なって負の感情が蓄積されていく。
 今回もある大きなイベントに参加……というか自分が登壇に近いことが企画されていたのですが、確定する前に断った。楽しみな部分も多大にあったのですが、現在の精神状況から逆算して当日なんらかの小さな不満が膨らみ、急に大勢の前で白ける可能性も僅かにある。というか、そもそも「元気のない状態で本来楽しむための場所」にいる事実そのものが勿体無くて精神が削られていくでしょう。「本当はここで素直に楽しさを受け入れれば笑顔で居られるのに、小さな不満を気にして不貞腐れていく自分」が気持ち悪くてぐんぐん辛くなる。これまでに何度も経験した。パチンコで数万負け始めた際、もうどうなってもいいから全部失った時の自分を体験してみようという心理に近い。最悪の人間です。
 わかってはいても、なってしまうからには仕方がない。僕だって素直に何かを楽しみたいのに、それはとても複雑な条件でしか成り立たない。ビジネスが絡むと余計に難しい。絶対どこかで何かが嫌になり、それをトリガーに情緒が不安定になる未来が見えているのだから、迷惑をかける前に諦める。被害が最小の方を選ぶ。せっかくの誘いや企画を断ってしまって申し訳ないですが、下手に参加するより結果的に全員が得をしまう。
 なにかに参加しても完璧主義が発動して嫌になるし、破滅願望が動いて「自分が可哀想」な方向へ向かいたくなる。総じて、「素直になれたら楽しいはずのイベント参加を断る」ことで、参加はせずに自分が独り可哀想になって部屋でウジウジしていられる。最適解ですね。大勢の前で閉ざして醜態を晒すよりも、一人の部屋で閉ざしていた方がいいでしょう。合理的だ。
 と、考えてしまうので僕が大勢の場へ参加できる率は極めて低い。今回も迷いましたがやっぱり無理だ。こんな精神で楽しめるわけがなく、和気藹々とする面々を横目に、斜に構えた自分への恨みつらみで吐き気に苛まれる状況の方が僕らしい。思い切って断ってきた。こうして文章にすることでキャンセルも確定できる。ここまで書いてやっぱり参加したらダサいからね。
 どうしようもない。このまま一生こんな感じなのかと不安もつきまとうが、とにかく今は少しでも長く眠って回復することを優先します。
 

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