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『恋愛論』と坂口安吾

 また日記を書かずに眠ったので投稿が昼になってしまった。昨晩、人恋しくてスペースを開き、スマホに向かって小一時間喋ったせいで体力を持っていかれました。今の僕は呼吸器に腫れがあるので長時間喋ると息が荒くなりめちゃ疲れる!
 それでも入院中〜退院後のいま、ろくに他人と会話していない・遊んでいないのが寂しくて、どうしてもネットを介して不特定多数と喋るくらいをしないと悲しくなってしまう。
 結局、僕はどこまでいっても寂しく人恋しさは抜けはしない。


 それはそうと、一冊の本が届きました。タイトルとピンクな装丁からナナヲアカリの新曲かと思いましたが、乙女の本棚シリーズによる坂口安吾の『恋愛論』です。文字通り、坂口安吾の偏屈でユーモラス、それでいて哀愁も漂う恋愛観が語られています。坂口安吾は小説も素晴らしいが、このような随筆もいい! 本書は『堕落論』のような真に迫った時代性はないが、代わりに「恋愛」の概念に対して一歩引いた目線での普遍的な価値観が示されている。
 特に頷いた点を抜き出すと、坂口安吾は恋愛を「一時の幻影であり、醒めるもの」と書いており、そして大人はそれを知っていることが悲しいと続く。大人はどうしても恋愛なんかが永遠じゃないことを知っており、いまこの瞬間熱に浮かれているだけで、「醒める」前提で恋をする。その点、永遠を信じている子供たちの恋愛は強烈な体験となるだろう。

 なるほど。そうなると僕も完全に遅すぎた。坂口安吾も冒頭で「恋愛とはいかなるものか、私はよく知らない」と断言する。それがいかなるものかを文学の中で探し続けている。自分もスペースや匿名メッセージサービスで恋愛のアドバイスを求められることがある。相談に対してわりと的確に返しているつもりでいるが、それは僕が無関係でよく知らないからこそ、客観的に醒めた視点で答えられるからだ。例えば「フラれたばかりでどうしていいかわからない」と言われれば、「失恋直後は両者ともに冷静じゃなくて拗れるからまずは我慢して数ヶ月放置する方がいいのでは?」と返す。相手は納得する。実行できるかはともかく、僕が言っていることは正論なのだから。
 坂口安吾も周辺人物が恋愛に一喜一憂している様子を見て、どこか憧れ、どこか醒めてバカにしてもいたのでしょう。なにせ友人は男女問題起こしまくりの末に亡くなった太宰治である。坂口安吾自体もヤク中となって妻に面倒を見てもらっていたが、ヤク中以後はもはや恋や愛なんて次元ではないだろうし、妻に関しても安吾が筆を取ることができるなら何でも良かったのではないか。とても素敵な関係だ。
 さて、昨晩のスペースにて、僕へ「恋と愛の違いはなんですか」と質問があった。唐突に一切文脈のない質問がくるのも醍醐味だろう。
 自分なりに一瞬考え、「恋」は自分自身も他者に認めてもらいたい感情だと答えた。『五等分の花嫁』で二乃は言う、「自分が幸せになるために恋愛をしている」と。好きな相手の時間を奪い、共に過ごして互いに至高の時を体験する。想い人に恋焦がれ、「相手からの返信が欲しい」「こちらを知って欲しい」という状態が恋ではないか。すべての人間は当然幸せを目指すべきで、その過程で意中の人間と過ごすアドレナリンによる幸福を手に入れようとすることは理に適っている。
 一方、「愛」はもっとスピリチュアルで宗教的な域のものに感じる。無償の愛・アガペー、隣人を愛する心。情けは人のためならず。要するに、見返りを求めていない。対象が喜んでくれるなら自分は犠牲になってもいいし、認識してもらわなくて構わない。むしろ自分の存在は相手から消えたっていい。
 そんな域に達するか? と思っていたが、意外とあった。例えばプロデューサーの娘さん(3歳)がプリキュアの話を何度も振ってきたとき、次にあったら家にある女児向け玩具でもあげようと思った。もちろん喜んでもらえたら嬉しいが、別にそれで僕への好感度が上がったり、恩を感じてもらいたいなんて一ミリも考えていない。ただ、渡したおもちゃが気に入ったならそれでよく、僕の存在はそこへ介在しなくともよい。
 あとは超てんちゃんへのファンかな。はっきり言って利益率で言えば、ほとんど僕へお金が回ってこない、なんならタダ働きのこともたくさんある。たとえば楽曲関連はすべてそうで、何千万再生されても、音ゲーに収録されても、ライブで誰かがカバーしても僕へはよくて数百円しか入らない。それでも、まあファンが、歌ってみたならそのアイドルのファンが楽しければいいでしょう。グッズやコラボに関しても実は僕への実益なんて殆どないことも多い。しかし、ファンは喜ぶ。変に得があるよりは、大勢の人間への無償の愛で動く徳の方が大事な場合もある。
 意外と「愛」はあるものだ。「恋」に関しては、やはり昨晩のように人恋しくて無理やり腫れた喉から声を捻り出して不特定多数へ喋ったりもする。その時は僕を認識して欲しい。そういった使い分けがされているが、そんな理屈が吹き飛ぶくらいの熱い恋愛が起きる方が絶対に良い。僕だって嗅覚さえあれば、恋人の匂いとやらを嗅いでみたかったさ。

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