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最近の友達たち

 近所に生活保護で暮らしている高校時代からの友人が居るものの、彼は生粋の引きこもりであり中々スマホを開かないため二日に一回くらいの頻度でしか連絡が取れない。本当に家から出ない生活だと、パソコンかゲームかどちらかに張り付いているのでスマホが不要になるっぽい。さらに言えば彼のスマホは僕のお古だ。
 彼にとってスマホは他人と接続されてしまう恐怖の機械であり、連絡先がないとさすがに生活保護でも生きていけないので一応所持している。が、できるかぎり触れたいものではないのでしょう。それは他人の生き方なので口を出すつもりはないものの、遊ぶ約束を取り付けるのに非常に不便極まりない。こちらから送った場合だけではない。向こうから遊びの連絡が来たとて、返信したら2日後に返事がくる。なんなら週を跨ぐこともある。もう慣れたからいいけど。
 最近、彼が睡眠薬欲しさに米青ネ申禾斗の診療を受けた際、睡眠薬は一切もらえず代わりに統合失調症に対する処方薬のみが渡された。「なぜか睡眠薬を全然くれない。幻聴の話をしただけなのに……」と言ってきたので、「幻聴の話しかしないからだろ」と返した。睡眠薬があればたくさん眠れてラッキーなものの、どうせ僕含む極々一部の人間としか会わないので自分の精神の病についてはどうでもいいらしい。どうでもよすぎて僕の部屋に置き忘れることも多く、自室に統合失調症改善の薬が溜まっていく。
 幻聴対策に一応飲んでおけばいいのではと促してみても、どうもしばらく近所で工事が行われているらしく、幻聴以上に本物のノイズが大きすぎてそれどころじゃないとのこと。
 その工事の音も幻聴じゃないのかと確認しに行ったら、本当に隣の建物が工事中であったので一安心。まあ昼間の彼が騒音で苦しんでいることに変わりはないけれど。
 スマホを見ないためなかなか連絡がとれず、かと言って一緒に遊ぶことに関してはわりと乗り気。二人で映画を観に行く約束をとりつけるためには、一週間前くらいに連絡しないと日程を合わせられない。歩いて20分の距離なのに気軽に会えない意味不明さがなかなかだ。
 そんなんなので、まあまあ心配でもある。そもそも薬がウチにあっても困るし。僕があげたスマホを使用しているので、最終手段としてアプリの「iPhoneを探す」機能を使用し、強制的に相手のスマホの音を鳴らすこともできなくはない。実際にそんなことをしてしまっては、また幻聴が悪化するだろうから本当に最終手段である。僕だってスマホから音が鳴るのはマジでイヤだし。
 で。以前にちょこっと書いたものの、新しく友人たちとルームシェアするための部屋を借りた。3LDKを3人で住む。彼らも昔からの友達かつ未成年の頃から一緒に住んでいた仲。このまま死ぬまでともに過ごすのか? 来月頭には鍵が渡される。
 僕はつねに暮らすわけではなく、ようやく机を置いて(実は僕の部屋にはちゃんとした机もPCもない)パソコン作業か原稿に徹するための仕事部屋として利用する予定。原稿なんて紙と万年筆さえあれば乗せる土台はなんでもいいだろ……と思っていたので、机を購入するのは5年ぶりくらいじゃないか。ちょうど友人たちも子供部屋おじさんを再び卒業したがっており、都合が良かったのです。
 で。そのルームシェア先がちょうど僕と生活保護の友人の家の中間くらいの位置に存在する。全員スト6が好きという共通点もあるため、生活保護の彼もゆるく遊びに来てリビングでゲームができるようにしたく、大きい冷蔵庫を買って雑に食糧を詰めておけば、彼が困った時にスマホを開かずとも(たぶん精神の不調時こそスマホを遠ざけている)生命と財布の危機を感じたら場合は、ふらっとやってきてサッと弁当でも食べるだろう。要するに全てにおいてちょうど良い。

 ともに住む友人の片方は職がないため、僕が多めに初期費用を出す。仕方がない。別にふざけて金を出さない・使い潰しているとかでなく、ただただまともに社会に出たくない信念があるのだから尊重する他ない。なんなら生まれた環境が資本主義すぎただけで、彼らののんびりした生活は寺とかで生まれていたら大活躍である。将来的に解脱にたどり着く可能性があるとしたら彼らの方で、僕はその過程にリスペクトがある。徹底して人間関係=社会から距離を置く。単純なようで相当な覚悟を要する。
 なんだかんだ書いたものの、結局はみんなでゆっくり集まって遊べる環境と日々が訪れるのは嬉しい。30年後、老人ホームでもリビングでヨボヨボの指を動かしながら格ゲーに興じていられたらいい。

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