見出し画像

お祭り前夜の永遠

 泣いても笑っても2周年記念放送は明後日。日付的には明日。それからすぐにニディガ展2(ツー)が開催される。その準備において、もはや僕が眠っている時間すらないらしい。今は動画編集の方につきっきりでスタジオで夜を明かしている。完成までスタジオ内で缶詰め状態。アニメ業界やエロゲー業界の佳境であるやつだね。

 MV作業を行なって頂いている。僕は後ろからエフェクトが〜角度が〜とうるさく指示をしており、その曖昧な発注を何百倍もの精度と解釈でめちゃくちゃいい映像へ仕上げてもらうのだ。「ここもっと青くしてください!」「動き少しゆっくりいけますか!?」とお願いするたび、机のレッドブルが増えていく。申し訳ない。とても助けられております。
 動画作業中は読み込みや出力のたびにどうしても1.2時間動けなくなるので、その時は今のようにソファで仮眠をとったり日記を書いたりしている。自律神経が死んだので部屋が寒いのか暑いのかすらわかっていないが、感触に安心するのでせめて毛布が欲しい。
 昼からスタジオでいろいろ動いて、夜は動画編集(後ろで見守るだけですが)。起きたらニディガ展2(ツー)の設営、明後日に至っては、昼は設営で夜は2周年記念生放送。神様だって、エンコード中くらいは寝転がっていても許してくれるだろう。PC動かさない方がいいんだし。


 こう書くと大変なことばかりですが、いやまあそれは全く否定できず、助けて欲しい(どうにもならない)のはマジであるものの、それはそれとしてスタジオ寝泊まりは楽しい。ちょっとした非日常だ。普通は部屋の隅にこんなPCモニターが何十個も積まれていたりしないし。そのへんのソファで寝ることも過ぎ去れば良い思い出に変わるかもしれない。しばらくは心の傷になりそうですが……。日記を振り返ってみると、2周年目前となった今は若干メンタルが回復してきてはいる。ここまできたらなんとかなるだろう。映像に関しては朝まで詰めるだけ詰めたいけれども。編集さんには本当に申し訳ない……が、お互い仕事ですので……それとは別に終わったらスパ銭代と食事代を出したりするから許してください。

 とはいえ、実は今が一番盛り上がり時なのかもしれない。押井守っ子だからね。文化祭本番よりも、文化祭前にあーだこーだ言いながら、その場で雑魚寝しつつ朝を迎える祭りの前の賑わいを知っている。オンエアされて堪能するのはファンの方で、それで僕らは報われるのだが、それは「安堵」が正しい。どちらかといえば、だんだんと引いた設計図に色と形が築き上げられていく準備期間、完成直前の方がスタッフ側はワクワクしているのではないか。だからラムは、文化祭当日でなく前夜の永遠を願ったのだ。 


 ソファが置かれた控え室の台所が、ちょうどラムとしのぶが恋バナしていた給湯室のようで趣がある。この暗さが本番以上に記憶に残る気がする。数年後に、ふと思い出す瞬間は、換気扇の音のみが轟く台所の薄暗さだったりするのだろう。
 さて、そろそろ動画の読み込みも終わり、タバコ休憩へ行った編集の方も机へ戻る。僕も後ろで張りつき、あーだこーだと時間いっぱい細かいことを言っていこう。いま、このビルには僕と編集さんの二人だけだ。こうして共に修羅場を乗り越えると戦友のような感情が芽生える。本当にありがたい。一人だけだと挫けちゃうよ。まあ一人で動画編集できるわけでもないから、ありえない前提だけど。向こうは「もう修正してくるなよ……!」とブチ切れているかもしれないけれども。ごめんなさい……。エロゲ業界時代は連日缶詰で手取り数万しかもらえなかったらしいので、一晩だけかつ相応の報酬を約束するこちらはだいぶ実力に応えているとは思いたいが。
 起き上がるぞ!……寝ていたい。寝ていたいけれども起きなければならない。日付的にはもう明日。40時間くらい耐えれば、どうにか、どうにかである。頑張るぞ。頑張るけれども、けっして「頑張ったから」で評価を加点しないでほしい。それは好きじゃない。
 ああ、たしかにラムもいて欲しいな。ラムがいたら、前夜が永遠に続いたって構いやしない。

サポートされるとうれしい。