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一口エッセイ:「なにかで成功したい」なる漠然とした質問が来た!

 「中卒22歳ですが、なにかしらで成功したいですがどうしたらいいですかね?」と質問のDMが来ていました。知らね〜!!! と当然のようにシカトしていたら、「冷静になったら、好きな作家さんにこんなこと送って恥ずかしくなりました。ごめんなさい」と続いた。ちゃんと冷静になれて偉い。人は、基本的に利害が一致しないと動かないのだから、この質問に僕が答えて得がないと取引が成立していない。中卒、高卒と関係なく、まずは相手とコミュニケーションするための基本は知っておかないといけない。
 が、冷静になってもらえているし、むしろ今ちゃんと答えた方が恥ずかしがるとしたら面白いので、逆に真剣に考えてみることにします。
 まず、本当に何もないかどうか。実際、20年以上生きた上でTwitterアカウントを所持しているのだから、必ずなんらかの得意分野はあるはず。料理でもネットでもね。一見、くだらないことであろうとも。めちゃくちゃアニメ観てます! とか。凡そ一般教養と呼べるものが備わっていない以上、サブカルかパワーでやっていくしかない。一発逆転で難易度の高い資格を取る方法もありますが、まあこんなDM送る時点で無理でしょう。とはいえ、わざわざこの人のアカウントに飛んでまで、彼の好きな分野を探るのも面倒くさい。どうせ、真面目に何か考えたところで、どうせ実行しないし。ですので、今回は「中卒22歳」という情報だけでいく。それしか送られてきてないので。詳しく書いてってわけでもないけど。
 もしかしたら、本当になんの取り柄もない可能性もある。例えば、「漫画で成功したい!」「YouTuberになりたい!」なら理解できます。じゃあ、それを実現するための段階を踏んでいこうってなるわけですから。
 「なにかしらで成功したい!」←????
 どうしろって言うんだ。別に中卒だからって、将来の目標に対するなにかしらの目処はあるでしょう。これでまともな返信がくる可能性を何割だと想定していたんだ。いや、結局書いていますけれども。
 じゃあ、「10年あれば必ずモノになるので、今からイラストか音楽を10年間頑張ろうか!」と言われたら実行するのだろうか? この回答はウソじゃない。22歳から10年、イラストなり音楽なりに全力を懸ければ、30代前半の頃には花開いている可能性は全然ある。最低でも、生活費はどうにかなるレベルにはなっているはずです。例え、元のスキル値が0でも。10年はそれだけ重いし、22歳ならまったく遅くない。本気で訊いているなら、それを実行してみてほしい。
 が、現実的には難しいでしょうね。せめて「ミュージシャンとして成功したい!」などであれば可能性はありましたが、「なにかしら」と書いてある分、クリエイティブな努力に情熱を注が続けられるとは思えない。三ヶ月くらいで飽きて、「売れてるやつらムカつくな〜」と愚痴って終わる未来が見えている。
 では、インターネットを駆使する。リアルでの敗者であろうとも、ネットの世界で第二ラウンドに突入できるのが現代の長所。ネットの世界で勝つ! ……とはいえ、それだけ言われてもどうしていいのか分からないでしょう。まず、数ヶ月の間、本当にネットしか見ない生活をしてもらいたい。朝から晩まで、いや昼夜逆転してでもネットサーフィンをし続ける。漫画やアニメへの寄り道はOK。そこへの興味は、のちに繋がるから。これをできれば半年行う。
 『銀と金』では、駆け出しギャンブラーが、高級なホテルのロビーで、ひたすら金持ちたちの話に聞き耳立たせる修行を行っていました。世の金持ちたちがどういう思考で生き、なにが突ける隙であるかを身体で覚えるのです。それと同じことがネットでも可能。
 実は、企業の偉い人ってそんなにネットを見ていません。あいつら忙しいから。打ち合わせとか会食に一生懸命だし、そうでなくても作業がたくさん。決まって、「今期アニメは話題作1.2個観てるよ〜」と言う。10個観ろバカ。10でも少ないよ。オタクコンテンツの人だろ! ……と、僕の愚痴は置いておき、本当に彼らのネットの勘って微妙なんだ。そこまでネットが必要なく、学生時代から友達や恋人ときちんと遊んできた人たちです。「ネット見てる」と言えども、本当に終わってる引きこもりたちに比べたら天と地の差。そもそも、見ているネットの範囲が違う。
 ここが確実に社会の「隙」であると思う。この時代、「ネットに詳しい」だけで十分な強みとなる。「オタクコンテンツにも詳しい」までいけると更にいいけど。そして、ネットに詳しくなる条件なんて至極簡単で、人の2.3倍の時間モニターと向き合っていればいいだけ。それだけで各コミュニティの空気感は学べる。クローズドなコミュニティなんて今のネットに殆どないし、それは放置でいい。なんて便利な時代なんだ。
 実際、僕も大学辞めてから半年間はネット・アニメ・読書しかしていません。家族も友人もいない孤独を直視したら狂ってしまうため、ひたすらモニターと本に逃げた。あの頃に、たくさんの作品を知ってこれた経験は確実に血肉となっている。なので、あなたも狂ったようにネットをしてください。インターネットがわかってきたら、自ずとそれを必要とする、あんまりネット詳しくないおっさんがやってくる。でも、あなたは僕のアドバイスを全無視してもいい。人間、そう簡単に自分の今の生活を捨てられませんからね。


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