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一口エッセイ:爆発の瞬間くらいは

 「ああ、こいつヘラって面倒くさくなるけど放置してれば治るから、できるだけリスク回避しつつ穏当に放っておける返信しよう」という思考回路の返信って直感で勘づくと思うのですが、僕の考え過ぎでしょうか。
 例えば「季節の変わり目だから気をつけてね」はあまり理解できない。春秋は季節の変わり目であり気温の変化によって体調が崩れる。それはわかったとして、夏は暑いから気をつけてね、冬は寒いから気をつけてね、も該当するわけで、明らかに環境によって弱っている場合でないなら無意味な回答じゃないか。春夏秋冬つねに体調不良の理由は選べるわけで、「いまつらいです」に対して「⚪︎⚪︎(季節)だからね」はテキスト上でのやりとの場合、会話を早く切らないとうだうだ面倒臭い以外に成立しない気がする。ならば、こちらは季節に対してなんの対策もできないだけの間抜けなのだろうか。温度感を身につければ解決する問題を他人に話すか?
 そこに加えて「こっちも大変なんだよね」は共感に見せかけてのバリアで、こちらも忙しいから話しきけなくてごめんねでしかない。もちろん時と場合によりけりで、文脈上でいったん自身の近況も混ぜつつ進めるパターンもある。が、そこから会話を発展させる雰囲気でなければほぼ回避手段でしょう。
 つまり「季節の変わり目だから大変だよね。こっちも弱ってるけど頑張ろう!」といった返しは中身がゼロで、「いいから黙って休んで自分で解決しろや」と認識する他ない。以降は「面倒臭いヤツ」以上に解釈されないので諦める。「追ってくんな!」と言われて追うと互いに消耗する。
 回避側を責めているわけではない。誰が悪いなんて白黒つくことなんて滅多にないのだから。そう言った議論は置いておき、とりあえず「お前を放置する」といった遠回しなサインは何個か確実に存在していて、それは言われた側の責任も結構なものだ(話す相手を間違えている、構うと図に乗る、または頻度が多すぎるなど)。なら言われた側にできることは黙って休む他ない。しかし、こういった場合はあらゆる理由で心身ともに休まらないから苦悩しているはず。
 となると、選択肢は三つで、「相談する相手を変える」「どうにか休む」「すべてを諦める」になる。
 「相談する相手を変える」は危ない。はじめに相談した相手に袖にされているのだから、人選を変えたとして、余計に相手を困らせるだけになる。または利用される。いま自分は純粋な危険物で、みんな爆発が怖くてたらい回しに決まっている。爆弾処理扱いに苦しんでさらに追い込まれるうちに、下手したら全員から嫌われて後戻りできなくなるかもしれない。敢えて対象を選択するとしたら、「会話コスト」がお金で担保されている精神科やカウンセリングでしょうか。とはいえ、自分に合う先生に会える、通院する苦労は重い。
 「どうにか休む」、基本はこちらでしょうか。休めなくても休むしかない。それは自他ともに共通認識だ。けれど、休んだら休んだだけ、重なっていく責務がは絡むので、それを想像したら不安になる。心が休まらない。いま片付けておかないと、後々パンクする恐怖に脳が支配されてしまう。それを危惧してのSOSであったはずだから矛盾する。それでも誰かに邪険にされる怖さよりはまずこちらを選ぶべきである。有力候補としての休養。なんにせよ、一旦たっぷり眠るは僕も推奨します。
 「すべてを諦める」、これは二通りの解釈がある。一つは全責任の放置。上に書いたような「休んでいると重なるノルマ」すら放置する最強の状態。無敵。運が良ければ何かが起こって誰かが尻拭いを行い、いつの間にか解決していたりする。代わりに多くのモノを失う。自己破産のようなイメージでしょう。次の解釈としては、「この苦しみから逃れらない」と諦め、命を削っている感覚を抱えながら普段の日常を送る。たいていの悩みは簡単に解決できるわけもなく、かといってどうせ新たな苦しみも次々に発生するのが人生なのだから、自分をゾンビのように扱う方がいっそ楽で誰にも迷惑をかけない。結局流れでそうなることが多いし、最も穏当な選択肢ですが、代わりに生の実感は薄れていく。
 というか、その場合は「目の前の課題」は処理される代わりに、根本的な心の爆弾は後ろに回しただけで膨らむ。爆発時の威力はむしろ増している。しかし、総合的な判断でそうならざるを得ないでしょう。そもそも「構うと面倒な爆弾」に触れなければ他者は巻き込まれない。もし一人でに爆発したとして、直接地雷を踏みに行った場合より他人の被害は浅いのだ。なので大抵は「今は⚪︎⚪︎(季節)だから気をつけて休んでね。こっちも大変だけど頑張るよ!」と返す。これなら遠くで爆発した際も、「自分は心配したんですけどね」と言い切ることも可能だ。社会が無意識に生み出した強固な社交辞令バリアである。
 社交辞令のバリアを何重にも張られ壁に囲まれてしまったなら、もう周囲は爆発へ対策を完了しているので、あとはどう破裂しようが自分一人が死ぬだけである。誰かがバリアを張った瞬間、己が爆弾であると自認してすぐに上記3つの方法を選ばねば、近いうちに壁の中で孤独に死んでいく。
 どうしようもない。みんな爆発に巻き込まれたくないし、一度甘やかせて味を占めた相手から標的にされるのも勘弁でしょう。社会の防御壁は遥かに高く、恐ろしい。せめて、僕は他人が本気で壊れて他人に迷惑をかけている様子に対して心中を察する構えくらいは見せたいし、実際そう思っています。悲しいよね。
 生涯に一度あるかないかの大爆発する時くらい周囲のことなんて考えなくて派手で派手でいいんじゃないか。BANG!

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