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一口エッセイ:たまには深夜に顔を出しなさい

 30も目前となり、特にクリエイターでもない一般企業に就職した友人たちのツイート頻度がみるみる減る。もう半月に1.2回呟くかどうかとなっている人もいる。僕を置いて、現実世界へ行ってしまったのだな。普通に働き、普通に給料をもらい、普通に会社で人間関係を構築する喜びを謳歌しているのだ。ともに10代後半だったころは、四六時中Twitterに張り付いていたじゃないか。深夜アニメの時間のたびに感想を投稿していたじゃないか。それがどうだお前、半月に一度、話題のネットニュースに触れるかどうかってお前……アカウントが泣いてるぞお前。
 そんな僕の声も届かないのだろう。彼らからすればSNSに張り付いた日々は既に過去なのです。そりゃそうだ。企業勤めがネットでなにかを発信する必要ってあんまり無いものな。社会や労働の愚痴を投稿するより、黙っている方が賢いし小綺麗だものな。沈黙は金だもの。静かにタイムラインからフェードアウトして、たまに覗いては「おまえ、まだTwitterなんか頑張ってたの?」って笑うくらいが一番いいよな。ネットの発言についたいいねで承認されるより、労働して上司や顧客から褒められる方が何倍も正しく心が満たされるのだからね。社会を潤滑に回して本当に偉いよ。これは皮肉でなく。
 たまにはなぁ、僕のことも思い出してくれよな。僕はバカだから、リアルとネットの線引きができなかったガキそのものですからね。いつまでもいつまでもインターネットとべたべたやっておりますよ。深夜のタイムラインでうだうだ生産性のないツイートをしていますよ。それが生きる楽しみなんです。惨めなものでしょう。安定した生活サイクルなんて夢のまた夢。深夜の孤独をタイムラインで紛らわしているうちに朝。慌てて寝て起きたら夜。そんな毎日を今でも繰り返しているのでございます。
 深夜にさぁ、いないんだよ。みんな朝の出勤に備えて早寝早起き。お前らがさ、いないんだよ。寝てるんだよ。昔は、朝まで好きなアニメの話してたのに。労働のために体力を回復しているのだ。僕は、なんに使う体力もないもないから日々適当なまま。
 たまにはネットのことも思い出してくれよな。本当に、本当に僕は毎晩いるからさ。こうして日記書いて投稿しているから。月明かりに照らされた部屋でぽちぽちスマホ弄りながら、岩の下の虫みたいにタイムラインに集まって、特に互いが会話することもないけれど、「ここに居る」ってだけで何となく孤独を分けあう気分になっているから。もし寂しくなったら、非情な現実に辟易した夜は、ちらっとでもいいから姿を見せなさい。深夜のタイムラインは誰でも受け入れる。恥ずかしくなったら日の出にあわせて消せば良い。そんな時があってもいいでしょう。現実世界に疲れた際は、近況くらい書いていきなさい。それが死ぬまでネットのならず者に生まれた僕の願いです。


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