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男女が大麻を吸って堕落していく冬目景先生の短編『僕らの変拍子』が大好きというお話

 アニメ「イエスタデイをうたって」のロングトレイラーが公開されました。リアルタイムだとはめふらと時間がかぶっているので録画で観ていますが、冬目景先生の絵が動いている時点でファンとしては百点!

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 今期は「イエスタデイをうたって」で冬目景作品も放送されている上に、「波よ聞いてくれ」「無限の住人」で沙村広明作品も2作放送。こんな夢みたいなことあるんだと毎週どれも楽しんでおります。

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 例にもれず、自分も冬目景作品は大好きでして、特に短編集がお気に入りです。ちなみに写真に映っている僕の本棚に並べられている本は漏れなくオススメなので、全て読んで欲しいくらいです。

 電子化もされ始めたので、手に入れるハードルが一気に楽に。あの「黒鉄」もKindleですぐ読める! いい時代すぎる……。「文車館来訪記」など、まだ紙でしか読めない作品もありますが。

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 とにかく僕は冬目景作品が好きなわけなのですが、一番好きな作品を訊かれると、迷わず「僕らの変拍子」を挙げます。新装版は表紙の時点でもう百点!!!

 数年前はわりとレアな一冊だったのですが、現在は↑の通り文庫かもKindle化もされているので、この瞬間にも即読めます。表紙は先述した02年の新装版のほうが圧倒的に好きなんですけどね。座り方で素行の悪さが一発でわかる。

・僕らの変拍子

 さて、「僕らの変拍子」がどのような作品化と紹介しますと、冬目景先生の初期短編集です。収録されている作品は7作。どの作品にもどこか歪んだ儚い美少女が登場し、レビューしたてのころから、先生の作風と絵柄が完成されていることが伝わります。

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 ちなみに、自分は最初は「現国教師RC-01」なる短編目当てで購入しまして、この作品は若い女性型ロボットの教師が不良気味の主人公と交流したり、性能に振り回されたりするお話。
 ロボットの女の子の時点で現代だとオチが読めますし展開も予想通り。ですが、93年時点でこのヒロインとストーリーを短編の形に落とし込めるのはものすごい功績と才能。
 王道の先駆者ゆえに、この作品が後のロボットヒロインに与えた影響は大きく、あのToHeartのマルチルートのシナリオは、「現国教師RC-01」が元ネタだと言われております。

 閑話休題。他短編も魅力的なのは当然として、やはり表題作である「僕らの変拍子」は出色の出来。

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 いかにも冬目景然とした男子高校生が主人公。本作には重要アイテムとして大麻が取り扱われており、冒頭でも鳥の餌を撒いて大麻を育てようとするシーンがあったり。

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 手の負傷により音楽の才能が潰れてしまった主人公。無気力な日々を過ごしているうちに、ひょんなことから同級生の不良少女・有島からタバコを分け与えられる。

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 といっても中身はただのタバコではなく大麻。はじめは恐怖を感じていた主人公も、だんだんとそのサイケな魅力を楽しむようになり、放課後の廃屋えで有島と二人喫煙する日々を送るように。

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 この退廃感とひねくれた青春感が素晴らしい。ヒロインの有島も、まさしく冬目景先生の描くアンニュイな美少女そのもの。
 大麻の効果により、リラックスしたテンションでゆったりと語りかけるようなセリフのテンポがいい……。

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 中でも特に好きなのがこのやり取り。
 社会的な事を全て投げ捨てて、自由に生きようと淡々と語る有島。罪悪感よりも好奇心と非日常。彼女の心情と生き様が詰まった素晴らしい1ページ。
 キマりながらダラっとありえない夢を語り合う若い男女……100点満点中1000000点!!!
 真面目に生きることが正しいのか、自由を愛して快楽を求め続けるのが人生なのか、社会から外れてしまった高校生と大麻を通して考えさせられるテーマ性。どこを切り取っても傑作です。
 読み終わって世界も落ち着いたら、みんなでメキシコ行こうや……。

 イエスタデイをうたってのアニメが大ヒットしたら、こちらもアニメ化したりしないかなーとぼんやり望んでみたり。

 ちなみに、僕らの変拍子が気になった方は、冬目景先生がイラストを担当した唐辺葉介の「PSYCHE」もおすすめです。こちらも主人公がどんどんサイケなトリップにハマっていくお話。

・おまけ

 どくだみ荘、Kindleで数冊タダで読めますので、このページの迫力を実際に体感してください。

 


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