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一口エッセイ:所属欲求の置き場の変化

 先日、「ネットを見る時間が減って、どんどんTwitterから自我が切り離されている」と日記に書きました。では、自分の自意識が今どこをベースにしているか。これは単純にニディガを製作したチームの人たち……言うなれば戦友とのやり取りや、リリース後に膨らんだ人間関係にある。打ち合わせ続きで週1.2で会うし、ネット上での連絡は四六時中ありますからね。あと数年は運命共同体だ。


 逆に、なぜ10年前のアカウント作りたての僕があんなに毎日タイムラインへ張り付いていたか。それは「所属欲求」だ。どこでもいいから帰属意識を持ち、帰る場所として、そこの一員として自分を受け入れてもらいたかったから。
 人の少ない深夜のタイムラインで呟けば、誰かが反応する。エアリプと呼ばれる行為によって会話が成立し、孤独を薄めることができる。タイムラインが居場所なのだ。深夜によく見かけて多少のコミュニケーションがあるアカウントのグループに「所属」している気持ちになっていたわけです。人はどこかへ所属し、そこで自分だけの役割を感じないと壊れてしまう。深夜のタイムラインでアニメや漫画の話を呟き、ブログで好きな作品を紹介する「役割」を勝手に感じることで生き甲斐を得ていた。
 所属しているからには、その場所を守るために必死だ。社会人になってツイートが減る人間たちを心から恨んでいたし、Twitterでの話題に言及することも少なくなかった。数字の増減だって気にもなるし、フォローやブロックが起きるたび一喜一憂した。ツイートがウケて、フォロワーが増えることが喜びであった。若さゆえに視野が狭すぎてTwitterが全てに思えた。でも、楽しかったんだよな。むしろ見るべきフィールドが広がった今の方が窮屈に感じることもある。
 けれども、接する時間の減少とともに家族意識も失せる。今や自身のフォロワー数すらも大雑把にしか把握していない。恥ずべきことに、その日の話題は「おすすめ欄」に表示された数件で把握する。タイムラインを追ったり、好きなフォロワーのツイートを遡ったりもしない。昔は、好きなアカウントたちの呟きは毎日チェックしていた。なんなら、いいね欄も欠かさず覗く。それくらいこの暇つぶしツールに真剣だったのです。
 不思議なものだ。「所属していない」と感じる場所のことは、みるみるどうでもよくなる。そこでの立場や見え方もあまり気にならない。すでに自己が確立したおかげもあるが。別の世界と認識しているのだから、無関係の場所で他人にどうかと思われているかは問題じゃないのだ。なので、顔色を窺わずに好きにツイートできる今は快適に感じている。揚げ足取りの不粋なリプライや引用に関しても、「Twitterはそういうものだ」と心を静にできる。
 もし、あなたが学校や会社に馴染めずに困っているなら、いっそ所属意識の置き場を別の場所に作ることをお勧めします。たとえば対戦ゲームでも始めて、そのゲームの初心者コミュニティに入るとか、 Discordサーバーでもいい。自意識の置き場を移すことで、イヤな現実からのダメージを減少させる。そんな簡単にはいかないけれど意識して損はない。特に、SNSに居場所を感じてしまうとストレスも歪みも強くなる。常時、これだけ多くのアカウントと繋がって人間関係を強いられるうえに、いくらでも陰湿な攻撃も可能な場所に自意識を置くといずれ狂ったって不思議じゃない。狂うこと自体は、それはそれで盲目的な快感でもありますけどね。人を辞めれば辞めるほど動物的な気持ちよさを得られる。僕は自我がネットと融合する恐怖に耐えきれず逃げ出したが、あなたはその向こう側を見に行く自由もある。
 所属欲もそうだし、人間は自尊心も必要とする。誰かに褒められたいのだ。多くの場合、所属している場所で活躍して褒められ、自尊心が満たされるのでセットであるはず。では、Twitterから剥がれた僕の自尊心がどこで気持ちよくなっているかと言うと、実はSteamです。
 Steamで、たまに拙作のレビューを眺めて「うんうん」頷いている。プロデューサーが話していましたが、Steamのコミュニティは極めてオタク的かつ公正だ。背景がデフォでダークモードであるくらいオタク。そういう意味では、Discordの運営もギークでしょう。安心するね。

 Steamレビューは良い。プレイ時間や本数も表示されるので、きちんと遊んだ人の感想を読める。僕は自作を完璧なモノと思っていない。反省点は多々ある。批判的なレビューでも、プレイした上で僕の弱点を突いているゲーマーを見ると大変嬉しい。そう、そうなんだ。本当は僕だってそうしたかった。わかってるね!となる。もちろん褒められても嬉しい。肯定も否定も、ゲームと向き合ってくれたなら製作者冥利に尽きます。
 過剰な持ち上げも、アンチの人格攻撃もない。運営がいかにゲームに真摯な場所を作ったか伝わる。この場所で一万件以上のレビュー数で「圧倒的に好評」を頂いている事実が、僕の自己肯定感を満たしてくれる。ちなみに今カウントダウン記念で50%オフだ。キミもストアページへ急げ!



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