一口エッセイ:おもしろフラッシュ倉庫の敗北
友人の若者が「昔は、おもしろフラッシュというものがあったそうですね」と知識として知っていても実際に見たことはない反応をしていたので、当時の文化を見てもらうと彼の前で再生してみたわけです。
ガビガビな音質の中で流れるギャバソや八頭身たち。「今見ても勢いで笑っちゃうなぁ」と呟きながら彼の様子を確認すると、もうありえないくらい無表情。笑う/白けるの土俵ですらなく、完全に「困惑」を表す無表情。「え? なに? 昔の人はムスカやムキムキのドラえもんが出ただけで爆笑する……? なぜ? 知能の低下……?」みたいな。完全なる未知の文化を目の当たりにし、そのうえで僕が「今見ても面白い」と評価してしまったことで、言葉が通じるだけで常識が狂っている平行世界に飛ばされたかのような顔でこちらを凝視している。めっちゃ怖い。
違うんだよ。僕らだってムキムキのドラえもんやドラミ、殺人ピエロと化したドナルドとかは、いくらユーモアがそれしかなった時代とは言え、わりと早めに飽きたよ! おもしろフラッシュの本領はここからだぞ! と気を取り直して、もすかうやトゥートゥートゥマシェリーなどの空耳系を流してみるものの……。
マ ジ の 無 表 情 !
「これは結構面白いよ」とこちらに歩み寄るようにお出しされたものが、さらに意味不明なモノで思考が爆発してショートしたような「無」。謎を食べ終わったネウロのような興味・関心への「無」。もはや映像の面白さ以前に、僕の正気度を疑っているような目つき。
嘘だろ……。僕らは日本くらいでかい餃子のAAを見て、お腹が破裂するんじゃないかと思うくらい笑っていたのに……。なんなら今見てもめちゃくちゃ面白い。
「いやでも空耳アワーとかの面白さはわかるでしょ?」と言っても、「え!?わざわざ空耳アワー観ませんよ」と返される始末。もう一切のユーモアに対する信頼を失っている。「TikTokのある時代で良かった。こんなもので笑っていたくない」と続けられてしまい、違うんだよムキムキのドラえもんだって時と場合によっては絶対面白いんだよ……と悲しくなってしまった。TikTokやYouTubeにあるハイクオリティなユーモア映像に比べたら、マッチョなドラえもんやアンパンマンが殴り合ってる動画なんて金貰っても見たくないだろうけど……。
その後も、「流石にこれは絶対笑うよ」と韓国版残酷な天使のテーゼや東鳩OPを流してもダメでした。「にゃるらさん、これオモハラ(面白ハラスメント)ですよ」とまで言われた。ハラスメント……僕が? いま、僕は若者に腐敗したユーモアを押し付けて迷惑をかけている……?
彼と別れたあとに、ズーンと落ち込んでいたものの、モニターいっぱいに表示された日本くらいある餃子のAA見たら、やっぱりめちゃくちゃ笑ってしまった。聞いてアロエリーナ、ちょっと言いにくいんだけど、僕はもう笑いに「思い出補正」が入った古い老害だよ。
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