見出し画像

あめちゃんわくわくデートゲームと黒い箱

 夏コミ向けの作品を発表しました。美少女ゲームのファンディスクのようなイメージです。こう……あの時代の間の抜けたポップなファンディスクが作りたい気持ちが溢れてしまって。本一冊とグッズくらいでも十分コミケは事足りる(元はその予定だった)のに、全力で趣味に振れる機会を逃す選択ができなかった。根本的に「美少女ゲーム」が好きなのでしょうね。

 僕が目指したいものに対し、周囲のスタッフたちの理解度があまりに高く、「あの黒い箱で再現することできますかね?」という無茶振りに、何十年も美少女ゲームに携わってきたグッズ会社のベテランの方が、「当時の工場などに問い合わせてみます!」と信頼度100%の返事をして頂き、あと1000個ほど残っていた当時の新品の外箱を全て買い占める結果に。すごい。
 もちろん、中身もミニゲーム以外にたくさん拘ってもらったアレコレが。それこそ、僕が生まれる前からPC98を生きたグッズ担当者がめちゃくちゃに張り切ってくれました。工場の人たちもグッズの再現度についてアイディアを出してくれたりと、みんなこんな訳分からん企画にこそ本気になってくれる。おかげで、一目でなにコレと笑える……けれど家に飾りたくなる絶妙な塩梅の外箱を再現できたと思う。これは、こちらの意図を完璧に汲んだイラストをお出ししてくれた陽子先生のパワーもあります。ジャケット良すぎる。完璧だコレは。黒い箱が世界にもっと残っていたら、あと何千個だって作りたかったが……。
 そもそもの在庫数の問題で、黒箱版は1000個前後で終わり。代わりに、1000個以降は現代に馴染み深い美少女ゲーム箱バージョンを用意する予定。そちらもそちらで味があるので、よければ黒箱版でなくとも飾ってもらえたらと。中のゲーム自体は、後にダウンロード版で安価に販売できたらな〜とは考えています(ノベルゲームの翻訳とかあるから時間はかかるかもだけど)。
 さて、どれだけ僕がこの外箱についてテンションが上がったかはともかく、今回の僕の主な仕事は、箱の監修以上に収録されているミニゲームの一つ、ノベルゲームへの挑戦です。

 イラストはマルイノ先生。あめちゃんの横顔、美人……。どのCGもとんでもなく美少女なので、ぜひ体験してもらいたい。マルイノ先生にお願いした理由は、もちろん僕が昔からまほいくの大ファンだから……。先生にあめちゃんを描いてもらえること自体が幸福すぎて、文章をカタカタ書いていくことがまったく苦じゃなかった。自分の文章に絵がつく。これより嬉しいことはない。とても恵まれたことです。ありがたいね。


 もうすこし後で正式に発表しますが、ノベルゲームとは別に小説も一冊書き上げた。全体の企画監修、その他テキストに他の仕事、そして何より毎日の日記を書きながら、さらに10万文字以上書き下ろす。フン……さっきは苦じゃないと言いつつ、やっぱり疲れるものは疲れた(本心)。
 今回のノベルゲームは2万字程度です。本編ではあめちゃんとのデートの内容はどうしても省かれるものの、「美少女ゲームといえばヒロインとのデートだよな!」という心残りを昇華したく、今回のテーマは「恋人とのお出かけ」です。ニディガ原作としてはデートの詳細は省略する方がテンポとして正しいですけどね。やっぱりオタクにとってヒロインといろんな場所を回る非日常な日常パートは、時にストーリーの本筋以上に神聖で大切な過程であり想い出でもある。
 今回は、敢えてテキストウィンドウを用意せず、画面全体を覆うタイプのノベルに。僕の文体としても、元より好きだった作品たち(主に葉ですが)的にも、こちらが正解であったと思う。現代の解像度で画面全体にテキストを表示すると、一文が横に長くて不自然なこともわかり、そこの微調整も細かくお願いしたり。なるほど。当時は画面が狭かったから、文章を追いやすかったのですね。そういった実際に製作しないと伝わらない機微を学んでいくのも醍醐味か。ちなみにピは喋りません。あめちゃんの恋人はアナタなので、アナタ自身の言葉で彼女の言葉に応えてあげるべきだから。
 愛するヒロインとのデートですから。女の子一人、人間一人と一対一で向き合い、互いが楽しく何かを得て満足して帰ることが成功条件。そんな恋人同士の繊細な心象風景を描き、ノベルとする。人と人が二人だけの狭い世界に籠る。こんなに倒錯的なことがあるかと思うが、世のカップルは日常的にこれらを行う。そんな細かいことなんて気にせず、思うまま遊んで笑って堪能できるからこそ、青春であり恋愛なる異常な関係なのでしょう。

サポートされるとうれしい。