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一口エッセイ:ブレンパワードとキス

 クリスマスということで、「ブレンパワード」のジョナサンとママンのシーンを見直す。「クリスマスプレゼントだろ!」の流れは本当に凄い。複雑な感情を僅かなシーンで表現するジョナサンの演技は、舞台俳優ならではのものなのでしょうか。
 富野監督は、特に「本来おだやかで優しい人たちが、些細なすれ違いで争いを始めてしまう」ことを描く天才だと考えており、それは誰が明確に悪という状況でないが、いつ戦争が始まりか分からない緊張感漂うターンエーの序盤などが印象深いと思う。
 ブレンでのジョナサンとママンは、「優秀な息子になることで愛されたかった(隣に居て欲しかった)ジョナサン」と、「息子が優秀だから放置して仕事に熱中したママン」のすれ違いを最大限に演出している。その爆発がクリスマスプレゼントのシーン。人間の感情が繊細に描かれ、こちらの感情も揺さぶってくる。しかし、自分がブレンで最も感動したのは実はジョナサン親子よりも別で、主人公の勇とヒロインのヒメのキスシーンに心奪われた。
 顔を合わせた瞬間、勇は唐突にヒメへ唇を重ねるが、それがさらりと描かれるのが衝撃だった。主人公のキスシーンなのだから、もっと騒いだり怒ったり、引っ張り続けるのが当然と思っていたから、軽く反応しただけでキスが流されて凄く大人びいて見えた。それが最終回のキス(ここもさらりとしている)に繋がるのだから堪らない。とても美しい画なのだが、深い意味がないのが素晴らしいと思う。そこに「生」を感じるし、ブレン風に言うと刺激的で官能的だ。この作品のテーマが「愛」であることが端的に表された行為で良い……。イエスだね!


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