一口エッセイ:深夜のエロ本屋から受け継いだ月刊OUT
まだ少しやることは残っているのですが、とりあえずニディガの重大発表に向けての大きな原稿・作業を終えました。頑張ったねぇ。今夜の発表をお楽しみにねぇ。
というわけで、気分転換に散歩を。と言っても時すでに深夜。閑静な街並みを無心で歩いていると2駅も先の場所へ来た。中野坂上。駅の近くで、怪しげな本屋がこんな時間に開いている。この時間に出歩くおっさんたちを狙う理由は一つしかない。エロ本屋だ。
仄暗い街に、いかにもなライトがうっすら輝き、プライズゲームの軽快なBGMが響いてミスマッチ。良い。この"暗さ"こそ個人経営のエロ本屋。深夜にぽつりと光る店舗の暖かさに、なぜかふらっと足を踏み入れてしまう。ここで誰かと寂しさを分け合える気がして。
沖縄に居た頃、深夜に家を抜け出してよくこのようなエロ本屋へ自転車を飛ばした。そこのゲームコーナーで100円のパチスロを回して朝を迎えたこともある。こういうお店に、わずかにだけ置かれた二次元の同人誌やフィギュアは妙な味がある。それらを眺めるのが好きだった。いまは高校生だけれど、大人になったら買ってやるからな……と、店頭に並べられる石恵のフルカラー同人誌へ話しかける。
そんなお店の店主だから、やっぱりオタクだったのだろう。店内にはそこかしこに二次元美少女のポスターが貼り尽くされ、その中でこつえー作画による擬人化ガンダムのポスターが数点あった。たぶんV2の擬人化だったと思う。元からMS少女が好きなエロガキであった僕は、どうしてもそれが欲しくて店主に話しかけてみた。「あのポスターくれませんか?」と。イカれている。そもそも深夜に高校生が入店しているだけで補導すべきで、その上店内でパチスロを嗜んだ帰りにポスターまで貰おうとしている。あまりにふてぶてしい悪ガキだ。が、そこは沖縄の治安悪い地域のエロ本屋。店主はなんと「月に一枚ね」と返したのだ!
月1!? よくわからないけれど、とても嬉しくなって、それから毎月、そのエロ本屋でこつえーによるロボット美少女ポスターを貰いに行った。大好きなスパロボと萌えの融合が、最高にクールに見えたのだ。こつえーに思春期を殺された少年の翼。今思うと、月1で届く雑誌の余ったポスターを貼っていたので、どうせ1枚ずつ余るから、将来キモオタになるであろうクソガキに未来を託すことにしたのかもしれない。なんにせよ、「深夜にやっている小さなエロ本屋」は、僕の中ですごく優しさを感じる空間に思えてしまう。
せっかくなので中野坂上のエロ本屋にも入ってみた。当然、四方八方エロ、エロ、エロ。きっとこの中にレアモノが眠っていたりするのかもしれないが、いかんせん三次元に疎い僕にはわからない……そんな中、明らかに異彩を放つ一角が!
なんと、そこには石ノ森などのフィギュアに、店主直筆の紹介文が書かれたレアなサブカル本やDVDが! すごい。映画『食人族』のDVDがわざわざ飾られている。このゾーンだけエロ本とは関係ない、店主のアングラサブカルな「自我」だ! こんなお店を長年構えるくらいです。相当の曲者なはず。きっとお宝があるに違いない……。そして、たどり着いたのがこちら。
月刊『OUT』の創刊号!
これは面白い。まだアニメ系に寄りすぎず、これからどんどんサブカルアニメ誌として進化していく直前のOUT。この一冊は、明らかにここの店主のお気に入りなのでしょう。なら、僕がいただいていく。ガッツがドラゴン殺しを選んで「あるじゃねぇかもっとオレの戦向きのやつがよ」と叫んだ時と同じ気持ちだ。三次元エロのレアモノはわからないが、伝説のサブカル雑誌の価値は伝わるぜ。
というわけでサクッと購入。まさか急にOUTが購入されるとは思ってもいなかったのでしょう。店主も何度も確認していた。あとPayPayで払うと少し嫌そうにしていた。OUTは現金で買ってもらいたかったらしい。謎の拘り。
店主が大切に保管していたサブカルの歴史は、深夜にやってきた元クソガキのオタクが勝手に受け継がせてもらう。
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