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怪奇!大きなお友達おじさん

 日付が変わるまで、プロデューサー宅にて長時間打ち合わせをしていた。そうなると必然的にプロデューサーの娘(3歳)と触れ合っている時間がそこそこ発生します。一年くらいそんな感じでたまに遊んでやったり、ごく稀におもちゃを渡したりしていたら、今朝はついに起きた時に「にゃるらくんはー?」と訊いてきたらしい。どうやら友人として認めてもらえたようだ。嬉しいね。
 理屈を立てるのは良くないですが、僕が子供に好かれることにはカラクリがある。なぜなら僕は子供向け作品の話がだいたい通じるからだ。つまり、子供視点で見れば「なぜか自分たちが好きな子供向け作品に同じ目線で向き合ってくれる変なおじさん」なのである。子供は変なおじさん好きだからね。社会からの目は厳しいけれど……。
 僕も幼少期は、親戚だったのか母の知り合いかはわからないが、ガンダムのことしか喋らない謎のおっさんが大好きでした。おっさんは会うたびSEEDの悪口を言い、「これを観ろ!」と初代映画三部作やHGのグフなどを渡してくる、絵に描いたようなコテコテ老害ガノタであった。しかし、その拗らせ方は「拘り」であり「個性」でもあるわけで、世の子供たちがフリーダムガンダムに熱狂する中で、徹底してジオンのMSをプレゼントするおっさんは嫌いになれない。あとガンプラを塗装してオリジナルカラーで並べていたのもめちゃくちゃカッコいいと思った。知らん大人と喋ることは非常にストレスだが、おっさんが真剣に昭和作品を語ってくる様子は好きだった。
 時は現代。
 クリスマスパーティーの名残なのか、プロデューサー宅にプリキュアが印刷されたお菓子が転がっていた。娘さんに確認するも、やはりプリキュアは存在だけ知っていても観てはいない。サブスクやYouTubeでいつでもディズニープリンセスや海外アニメが垂れ流しできる昨今、早起きしたりマイナーな配信サービスに登録しないと観れない国産女児アニメへ触れる機会は減ってきているのでしょう。4.5歳になればまた好みは変化するかもしれませんが。『ディズニープリンセス』なる強大なコンテンツに、日本の女児アニメがどう個性を発揮して立ち回るかは今後の課題である(評論家)。
 タブレットが渡されると、1.2時間くらいは平気でYouTubeへかぶりつき、一言も発さなくなる。サムネからサムネへ辿り、キッズ系海外アニメを網羅する勢いだ。「子供がYouTubeを観たがる」ことに困る声も散見されますが、逆に言えば端末さえ渡すと会議中もつねに集中しているのは助かるんじゃないか。海外アニメを観ているうちに自動的に多少の英単語も身につくかもしれぬ。「YouTube上で無限にアニメが置かれている」という点で海外コンテンツは非常に強い。日本だとdアニメストアまたは専門チャンネルへ加入する必要があり、幼児が直感的に視聴できない。他人の育児だからどうだっていいが……。
 で。観てはいないけれど興味は持っているので、お菓子の袋に印刷されたプリキュアを教えてやることにする。「この子はキュアスカイ。この子はキュアウィングで男の子なんだ。この子はプリンセスで……」と一人一人指を指す。3歳児曰く「キュアプリズムが一番かわいい!」らしい。やはりピンクは強い。ましろ氏は強い。

 「でも、キュアスカイもかわいい!」と続く。他者へのフォローも忘れない。幼児ながら炎上対策もバッチリだ。ちなみに結局「プリキュアは全員かわいい」とのこと。驚いたのは一度しか教えていないのに関わらず、すぐに全員の顔と名前を一致させたことだ。僕なんかもう20年以上ニチアサを追っているせいで、ライダーもプリキュアも脳内でごちゃごちゃして名前すぐに出なくなっちゃったよ。ギーツのライダーは多すぎるし、ガッチャードもフォームが多くて、もう「赤いやつ」「強いやつ」などニュアンスでしか記憶できなくなっちゃったんだ。悲しいね……。
 それはそうと、せっかくなのでプリキュアの変身シーンを見せる。画面に夢中になって身動きをしなくなった。プリキュアの変身バンクの可愛さはそれだけ劇薬なのでしょう。公式が20周年を機に全プリキュアの変身バンクをアップしてくれて助かるぜ。なぜかHUGプリだけそれまで上がってなかったから……。自動再生しているうちに過去作に飛ぶので、「これはトゥインクルプリキュアの子で……」と補足をする。素直に聞き入れているが、きっと「なんでこのおじさんは全プリキュアを知っているんだ!?まあ、いいか!」と疑念が脳裏をよぎっていてもおかしくない。おじさんはさ、ウルトラマンもガンダムもまだまた大好きで今もおもちゃを集めてるんだ……。
 というコミュニケーションを経て、ついに起床時に僕が帰宅したことを悲しむくらいには好感度が上がった様子。そりゃよかった。変なおじさんは社会的に居場所がないんだが、代わりに子供目線で喋ることができる。大人になれないからね。娘さんもきっと学校生活をエンジョイするうちにプリキュアの名前を言えなくなる日が来る。その時もおじさんは延々とプリキュアや今後復活するプリティーシリーズも特撮も追い続けている。その時に会うことがあれば「いい歳してキモい」と軽蔑されるかもしれない。それが正しい。
 「変なおじさん」は、好きなものの話をする時だけ誰より真摯に、相手が幼児あろうと敬意を持って接する。大人や社会的に見えない妖精、まあ妖怪に近いか……なんでしょうね。

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