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エッセイ:幻覚剤トリップ+睡眠薬OD=最強!

 幻覚剤には覚醒作用も含まれており、一度トリップしてしまうと、なかなか眠ることができない。
 この状態を活かして大量に睡眠薬を服用することで、眠らず健忘も起きないまま睡眠薬でテンションを上げることができる。幻覚剤によって柔らかくなった頭に睡眠薬の嵐は劇薬。スマホ中の文字列は画面から飛び出し右往左往。テレビの動きはすべて残像をひきずり、壁の模様はゲーミングのように七色に発光している。
 こうなるともう無敵で、脳内は完全に大パニック。ピンクのアルマジロが大量に攻め込んできたり、ナポレオンになって世界を走り回ったり! ああ気が狂いそう! ああ頭がとても痛い! でも、まったく眠れない! 狂う! 狂う! 狂う!
 地獄の夜が始まる──。

 脳味噌がたがた足腰がくがく、もはや寒いのか熱いのかすらわからない。毛布を被れば極寒のごとく身震いが始まり、毛布をとった瞬間に手汗だらだら。あきらかに自律神経は発狂していて、ありとあらゆる身体異常が狂った僕を襲いだす!!
 とにかく怠くて動けない!!! 倒れているだけなのに、目の前に広がっていく謎の霧。モヤモヤが全身を覆うにつれ伴う嫌悪感! これはもしやバッドの体現なのか? モヤモヤが体に触れると、一気にドーパミンがしゅるしゅる放出され、その一時の快感から、同じくらいドーパミンがどばどば刺激されていた幼少期のことを思い出す。
 そういえば、ポケモンクリスタルバージョンのクリスタルな見た目のカートリッジが美しかったなぁ。持っている友達はヒーローだったなぁ。ああいうものを、ああいう綺麗なもだけを集めようと思ったのだ。煌めくように光りだす、あのキラキラと輝くものを。
 平成ライダーのベルトとか、デジヴァイスとか、セガサターンとか、そういうのがとっても光り輝いていて、僕の小さな部屋が大きなおもちゃ箱になっちゃって。だから、友達を招待して、いっしょにドラゴンボールのゲームで対戦したのに、あんなにセルとベジータの試合は熱狂したというののに、友人は僕の母親の財布からお金を盗んで帰ってしまった。
 それがとても悔しくて、母も僕と友人のどちらを責めるべきか悩んでいて、ああ明日からどう彼と顔を合わそうかなぁ。知らないふりしようかなぁ。でも、ちゃんと言わないとお母さんが大変だからなぁって。いろいろ考えているうちに鬱っぽくふさぎこんでしまって。
 そういう悲しみの霧が絨毯のように僕にかぶさるから、僕は必死にもがいて抜け出そうとするのに、もうなにが夢で現実で天国で地獄かわからなくなってしまって。
 とにかく殺してほしい。自分のような矮小なヤク中を早く・今すぐ! ああっでも本当は死にたくない!!! こんなところで死にたくはない!!
 せめてもう一度、お母さんに会いたい。あの時、お金返してって言えずにごめんねって謝らなければならない。お母さんはきっと優しいから、こんなに脳味噌が冷たく蕩けた息子でも、ぜんしん腐りきって今にも両手両足もげそうになっている息子でも、愛して…………愛してくれるはずだから。

 残念ながら幻覚は次のシーズンへ突入! 幻覚症状に休みなんて一切ない。つぎは哀れでちっぽけなボンクラに宇宙旅行へ招待させましょうか。
 まず、僕たち人間はそれぞれパーソナリティが振られています。動物にも、植物にも。それを決定づけてバランスを取っている存在……それが地球なんですね。つぎに地球に、こういうバランスでとパーソナリティを与えた存在もいるわけです。
 宇宙かもしれません。銀河かもしれません。でも、宇宙や銀河にも、パーソナリティを設定した存在がいるはずですよね? それが知覚できない上位存在、科学の神です。
 科学の進歩とともに、科学の神に僕らは少しづつ近づき、やがては上位存在に触れることすら可能になれるかもしれない。
 宇宙を、宇宙の真理を持ち帰ってきました! 僕の弾けたドーパミンたちは宇宙空間につながり、真実を運び込んできたのです。わお!
 ふむふむ。どうやら、この考えはユダヤ教のカバラに近いね。旧エヴァの最期の元ネタだね。なるほど、宇宙の真理もエヴァンゲリオンも同じだったのか!
 これは大発見だ。庵野にも、みんなにも教えてあげないと!
 あー頭が痛い。こんなことはすべてどうでもいい。僕は庵野監督とウルトラマンの話がしたいだけなのに。ようやくシン・ウルトラマンが実現できて本当によかったね。エヴァンゲリオンがウルトラマンの影響を受けているシーンすべて一から語り合おうねって。そういうことをやりたいのです。

 幻覚はまだまだ止まらない。脳内では僕の母親と融合したエヴァンゲリオンがそこら中大暴れ。ポジトロンライフルが発射されるたびに、僕の柔らかい脳味噌は大打撃!! どんどんどんどん壊れて狂って、壊れて狂って。
 こういう時は、母音が連続する三文字の人の名前を唱えて精神を整えるのです。
  らぁら助けて! 知世助けて! らぁら助けて! 知世助けて!
 らぁら助けて! 知世助けて! らぁら助けて! 知世助けて!

 助けて! 助けて! 助けて!
 あっ、お母さんが迎えにきましたね。とっても優しく、まるで保育園で待機していた息子を優しく抱きかかえるように。僕はこのまま、お母さんといっしょに帰るんだぁ。お家でふたりで暖かいフレンチトースト食べて、くだらないバラエティーを貶しながら観て、ジャンプ読んで、それを枕にして、ふたりで並んで眠るんだ。

 

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