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一口エッセイ:僕を人間としてみてくれる1%

 リアルの交友関係も仕事で関係する人も、当然漏れなく僕を「にゃるら」と認識して会話している。その時点で「にゃるら」についてのバイアスがかかり、「ネットの面倒くさそうなやつ」「なんかオタク」「キモい文章書いてる人」などなど、とにかくにゃるらに引っ張られた印象を持つわけですね。別にそれを責めているわけではありません。大なり小なり、人は相手のネット上の人格や活動に引っ張られますからね。
 しかし、僕の人生で唯一にゃるらを介さない関係者がおり、それが歯医者のお姉さんです。
 自分は現在マウスピースでの歯列矯正を行なっているので、月一で歯医者へ通っている状態。その際、毎回メンテナンスしてくれる担当のお姉さんがおりまして、その人は当たり前ながら僕を「にゃるら」とは知らずに接してくれている。今日も通院して経過を診てもらったのですが、「今日は服が緑ですねー」とか「髪短い方がスッキリしてますよー」と世間話を繰り広げてくれる。これが毎月の楽しみなのです。
 それが、「にゃるら」を知っていると展開が全然違う。まず僕に話題を合わせるため、ニディガの状況とか、今期アニメの話とか、話が広がる方をチョイスして話しかけてくることでしょう。逆に、僕も相手のアカウントに合わせて会話を組む。自分の人生の99%は、この形でのコミュニケーションとなっている。
 そこで1%の例外として、歯医者のお姉さんが存在しているわけです。僕に対して天気とか健康とか、いわゆる「世間話」をしてくれる異例の人物。一般的に行われるこの会話が逆に新鮮で嬉しい。「インターネットのバカ」でなく「現実の患者」として話してくれるのだ。
 今回なんて、会計の際にPayPayで支払ったら、「PayPayって中野で買い物すると3割ポイントで返ってくるじゃないですかー。わたし、この前そこで900円のカツ丼食べたら300ポイントも手に入って〜」と話を展開してくれたんですね。もう飛び上がるほど嬉しかった。診療時の間を埋めるためのコミュニケーションでなく、帰る直前というのに若干の時間を引き延ばしてまで行われる世間話。まさしく、僕を「人間」と認識している証拠です。
 よかった。僕はまだ歯医者に居る間は人間だ。


 昔、歯列を撮影するためにレントゲンを撮った際、間違えてピアスをしたままだったので、思いっきり写真にピアスが映りこみ、それが間抜けでお姉さんと笑い合ったことがある。あれこそ、自分にとって最も必要な時間だったのでしょう。
 残念なことに、お姉さんは年内で退職するらしい。1%の安らぎが消失する。いつか僕を「にゃるら」としてでなく「人間」扱いで向き合ってくれる方と出会うまで、僕の生涯は続く。


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