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ういこうせん

 "おい、おまえら天国行くぞ!
 真っ白なキャンバス並べて
 オタクたちを集めたら大きな船をだすぞ!"


 しぐれういさんの2ndアルバムにて、Aiobahn作曲の曲に作詞で参加しております。タイトルは『ういこうせん』です。

 しぐれさんからのイメージとして「ゆるく生きてもいい」というメッセージを頂き、とはいえオタクたちは日々働くわけだからそのテーマをどう彼らに伝えるべきか、から考えていきます。
 本人の配信を拝見しながら考えているうちに、配信内に何度も登場する「ビーム」を平仮名にしてみた。
 「ういこうせん」。なかなかシュールな字面に笑いつつ、言葉の響きとしては『蟹工船』を思わせる重厚さも併せ持つ。瞬間、これだなと確信して進めていく。
 蟹工船は、労働者たちを乗せた過酷な漁船の凄惨な環境を描いたプロレタリア文学。「ゆるく生きてもいい」現代のスタイルとは真逆である。が、別に今のサラリーマンたちだって社会の船で週5の労働生活を旅していることに変わりない。そんな彼らが働きながら何を救いとしているか。それこそ、推している配信者の、アイドルの存在でしょう。

 "ボクたち毎日働く 少女を夢見て働く
 ボタンを押したら極楽 踊れば天国"

 社会の、延いてはインターネットをゆく大きな船の上の先頭でしぐれさんが踊っていたら。それなら労働者(オタク)たちも彼女の姿を頼りに光を見据えることができるのではないか。
 非人道的な戦前の船とはちがい、現代にはアイドルが居る。ボタンの奥で歌い踊る彼女たちのために生きる、ある意味でゆるい生活を赦されている。これなら自分でも歌詞が書けるし、オタクたちともサビで一緒に歌えて楽しいのではないか。

 "チャット欄へ放つボトルメール
 オタクたちは ういの夢見るたすかる
 溢れだすコメント 忘れるなメメント
 どうせリアルは監獄
  あなたとなら堕ちていく地獄"

 いつも収録の手伝いをIOSYSのまろんさん、仮歌をななひらさんにお願いしており、今回も同じ段取り。が、運命的にもまろんさんはあのロリ神の作詞家である。そのまま曲内のオタク役の合いの手はお二人の声ですね。愉快でいいね! 毎回ありがとうございます。Aiobahnも喜んでる。
 まろんさんの「電波曲は恥ずかしくないとダメだ」という信条に感銘を受けており、ロリ神は正しくまろんさんの生き様そのものが反映された歌詞だ。そのことを意識すると、自然とまろんさんへのリスペクトも綴られていった。

"はいはい!みなさん注目してくださーい!
 見えますか
 逃避行の果てに広がる黄金のうい麦畑
 ああ 本当に大切なことなんだっけ
 救済も楽園もきっとあるんだよ"

 迷えるオタクたちの行く先が、広大な電子の海すら照らす、意思を持った美少女キャラクターたちの光で導かれんことを祈っている。

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