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一口エッセイ:ヴィランの言い分

 NHKで放送されている『ヴィランの言い分』を観ています。
 害虫や害獣、他にはうんこなど、世間からは忌み嫌われる「ヴィラン」について解説してくれる番組で、人間視点では「敵」でしかない存在の事情も知っておいてあげようという優しいコンセプトなのですね。

 ちなみに、ハエは人気があったのか2回も特集された。たしかにこの番組でヴィランとされる中ではカッコいい方だしね、ハエ。グロテスクゆえのダークなカッコよさがある。メガテンのベルゼブブや『ザ・フライ』の影響なんでしょうけど。そういえばザ・フライで初めて化け物になった元人間がその苦痛に耐えきれず「殺して……殺して……」と頼む展開を知った気がします。「蝿の王」って概念はシンプルに良い!

 それはともかく、この番組をずっと観ていると、もし『ヴィランの言い分』というタイトルで人間の敵を紹介し続けていくなか、最終回のサブタイトルが「人間」だったらめちゃくちゃいいオチじゃないか? と想像してしまう。害虫や害獣、うんこや脂肪にムダ毛などの言い分を解説しきったあとに「人間」が特集され、「人間はこんなに愚かで悪い生き物だけど、実は人間にも人間なりの言い分があるんですねー」と紹介されると皮肉が効いてカッコいい。
 たしかに、人間はたくさん間違えてきたものの各々に言い分はある。誰かが何かの拍子で「悪人」と扱われるようになってしまったとき、この『ヴィランの言い分』のように、まずは当人の主張を丁寧に聞くべきだとは思う。それくらい善悪とは複雑怪奇なものであるし。けれども、大抵の場合は槍玉に挙げられた人間が冷静に話を組み立てられることも稀だし、なんなら全否定モードに入った人たちからは正しい主張も捻じ曲げられていく。この構造がある以上、この世界は裁判以外で汚名を返上することは難しい。
 となると、やはり「ヴィラン」と呼ばれてしまった概念の言い分を聞く番組の主旨は面白いし、捻くれた子供も興味を持ちそうだなと感じる。人間にとっての真のヴィランは人間って展開も安っぽい気もするが……このノリで悪とされている人間の事情を解剖することが現実にあるとどうなるのかは、すごく興味深い思考実験ですよね。


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