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エッセイ:こうあらねばならないという呪縛

 このような相談が届きました。

笑わないでほしいのですが、ハタチ超えて厨二病が治りません。オタクならこうでなくてはならない!という自意識に囚われ続けた結果強迫っぽい感じになってしまいました。そのような状況がここ数年間続いておりだいぶしんどいです。どうしたら自意識から解放されるでしょうか。

 質問内容、痛いほどに伝わります。
 オタクとして生きていくには暗黙の了解や拘りが何重にも待ち受け、またコミュニティには多くの縛りや空気感があります。
 モテない者同士、異性と絡んではいけない・顔を出して調子に乗ってはいけない・日常アニメだけの話をしていると軟弱者だと思われる……。人はいろんな誓約と制約を自らに課して活動していくのです。
 自分の知人は、仕事に専念するために漫画やアニメを禁じてしまった反動で、仕事を辞めてからも漫画やアニメに対して拒否反応が出るようになりました。それほど、無意識レベルにまで刷り込まれた鎖というのは重い。

 僕はいろんな誓約と制約の上でのしあがったアカウントだと思います。
 ソシャゲの話題をほぼしなかったり、恋愛や食事などリアルっぽい話を避けたり、とことん社会的な話から外したりなど……。縛れば縛るだけ、他の部分が強化されているくのは、念能力もアカウントも同じかも知れませんね。
 ただ、守ったからなんだ、好きに生きたほうが楽しいじゃないかと言われたらそれまでで、実際はオタクだってみんな恋愛しちゃうし、タブー視されていた「楽しい自分を見せること」だって、昔ほど周りに叩かれたりはしないでしょう。みんなインターネットの荒波に飲まれて優しくなりました。
 母数が増えたんですよね、オタクも、インターネットユーザーも。僕らのような日陰者には想像できませんが、世の中の大半の人は明るく生きているので、人が増えるとどんどん陽の光を浴びるようになるんです。インターネットだってそうなった。
 ただ、禁じられているということには理由があります。XXXHOLiCでも「夜に爪を切ると親の死に目に会えない」などの教訓には、語り継がれるだけの意味があるって話があったじゃないですか。

 「モテない者同士、異性と絡んではいけない」は、恋愛経験の浅いオタクが下手に異性と絡んでも痛い目見るだけで、「顔を出して調子に乗ってはいけない」は、ネットリテラシーそのもの。「日常アニメだけの話をしていると軟弱者だと思われる」は、美少女だけでなく色んな作品に目を向けろなど、理由をこじつけることはできます。
 守ってきた意味はあったんです。なので、質問者さんが自意識を拗らせた数年間は無意味じゃありません。意味があると思います。
 後は、少しづつ自意識で縛ってきたものの意味を理解し、使いこなすことができると確信したら外していきましょう。例えば、僕は「顔を出してはいけない」空気感を壊して、積極的にインターネットで顔出ししました。
 なぜなら、その方が活動しやすい(どうせ活動中に顔を出すし)し、突然タブーを破ることで発生する面白さの方に利があると判断したからです。
 加齢とともに、自分の主人公感も薄れ、自意識もすり減って、次第に丸くなります。今の僕は実際「和姦で抜くのもアリなんじゃないか」くらいには考えています。まだ試していないので抵抗がありますけど。
 僕は、この「オタクコミュニティにおける無意識の縛り」が抜けるのは25からだと思っていますし、それまで拗らせまくる方が意外と楽しいのかもとも考えています。

 自分は何を守り、何故守ってきたのか考えると良いのかも知れません。これは、まだまだ自意識を拗らせて色んなものを縛っている自分への戒めを込めての回答でした。

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